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 NTNが開発した、電動車両の駆動用モーターの高回転化に寄与する深溝玉軸受(図1)。保持器の形状や材質を工夫することで、4万rpmのモーター回転数に対応できるという。軸受の回転性能を高めることでモーターの小型化を後押しする。

図1 高回転化に寄与する深溝玉軸受
図1 高回転化に寄与する深溝玉軸受
モーターの小型化に寄与する。(写真:NTN)
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 各国の厳しい二酸化炭素(CO2)/燃費規制を背景に、自動車のパワートレーンの電動化が進んでいる。メーカーが販売する車種全体の平均燃費が基準値を下回らないように義務づける企業平均燃費(CAFE)規制も厳しさを増す。こうした規制を背景に、各自動車メーカーは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)などの電動車の販売比率を高めている。

 電動車の普及に伴う軸受需要の拡大に対応するため、NTNは高回転に対応する軸受の開発に注力した。EVの航続距離を延長するためには「モーターをはじめとする各部品の小型化が必要不可欠」(同社)となる。

 モーターをそのまま小型化するとトルク不足となるため、高回転化でそれを補い、出力を増幅させる必要がある。「軸受にはこれまで以上の高速性能が求められている」と同社自動車事業本部自動車軸受製品ユニット自動車軸受技術部開発・基礎技術グループ主任の佐々木克明氏は話す。

保持器の形状と材質に工夫

 軸受を高回転に対応させるためには、遠心力と発熱の対策が求められる。「一般的な軸受は高速で回転すると、保持器が遠心力で変形・破損しやすくなるとともに、転動体(玉)と保持器が干渉することで発熱してしまう」(同氏)という。併せて高回転化に伴い、転がり抵抗が大きくなり、潤滑油が希薄となって保持器の温度が上昇する。これら、保持器の変形と熱収支のバランスを最適化するため同社は、保持器の形状と材質を工夫した。

 「遠心力変形への耐久性を上げるための円環剛性の確保と、遠心力によって外径側に広がらない爪の工夫が設計のポイントだ」と同氏は語る(図2)。具体的には、保持器と転動体が直接触れるポケット部の形状を工夫した。軸受が高速で回転すると爪に遠心力がかかり、爪が鋼球に強く押し当たる。これが破損の原因になっていた。

図2 遠心力変形への対策
図2 遠心力変形への対策
高速回転に耐えられる形状とした。(出所:NTN)
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