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 人手不足を解消するためにロボットだけで生産ラインを自動化したいが、ロボットが苦手な柔軟物を扱う作業は自動化しきれない。かといって協働ロボットを導入して人とロボットが混在する「半自動化」を進めようとすると、協働ロボットの動作速度が遅いため生産性が上がらなかったり、幾つものセンサーが必要でコストがかさんだりする――。

 こんな悩みを抱える製造現場は多い。そうした課題に対応すべく産業技術総合研究所(以下、産総研)が開発したのが、デジタルツインを活用し、生産性の向上と安全性の確保を両立させながら作業者と協働ロボットとの共同作業による「半自動化」を実現するためのシステムだ*1。トヨタ自動車の協力を得た模擬生産工場における部品供給作業の実証試験では、システム導入前に比べて生産性が最大15%向上し、作業者の負担が約10%軽減したという。

*1 国立研究開発法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」の一環。
産総研臨海副都心センターに設けた模擬生産工場
産総研臨海副都心センターに設けた模擬生産工場
作業者1人と協働ロボット1台による部品のピッキング作業を再現した。(写真:日経クロステック)
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製造現場を撮影した映像や作業者の人体モデルなどからデジタルツインを構築する。人体モデルが赤いほど負荷が大きく、黄色から緑、青へと変わるほど負荷が小さいことを示す。(写真:日経クロステック)
デジタルツインの映像
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 同システムでは、作業者とロボットが作業している環境を観測し、作業者の動きや身体にかかる負荷、作業者とロボットとの間隔など安全環境を仮想空間でリアルタイムに解析。作業者の負荷を軽減できるよう協働ロボットに次の作業を指示したり、協働ロボットが苦手な作業は極力、作業者に割り当てたりする。