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 日本の宇宙ベンチャーispace(東京・中央)は2023年2月28日、日本初の民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1の現状を公表した。月着陸試験機「シリーズ1ランダー」は、2022年12月11日に米SpaceX(スペースX)の「ファルコン9」ロケットで打ち上げられ、一度地球から約140万kmまで離れて太陽の重力を利用し、必要エネルギーを最小に抑えて月周回軌道に到達できる軌道を飛行している。

* ミッション1は、ispaceが開発した最初の月着陸試験機「シリーズ1ランダー」で実施する月着陸実験の総称。
ispaceのHAKUTO-Rシリーズ1ランダー
ispaceのHAKUTO-Rシリーズ1ランダー
(写真:ispace)
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 打ち上げ直後に複数の小さいトラブルはあったものの、どれも解決した。HAKUTO-Rランダーは2023年3月中旬にすべての軌道修正を終え、同年3月末に月に最接近して月周回軌道投入に挑む。月周回軌道投入に成功した場合、約1カ月の準備期間を経て、同年4月末に月面への着陸を実施する予定だ。

 これまで、民間ベンチャーの開発した月着陸機が月面着陸に成功したケースはない。HAKUTO-R最大のライバルである米Astrobotic Technology(アストロボティック・テクノロジー)の月着陸機は、2023年3月時点では5月初旬の打ち上げを予定している。もしもHAKUTO-Rミッション1が2023年4月末に月面着陸に成功すれば、世界で初めて月面着陸に成功した民間開発の探査機となる。