日本電産の株価の下落が止まらない。2022年4月末に同社永守重信会長が最高経営責任者(CEO)に復帰しても、株価の反転上昇は見られない。2023年3月3日終値は6868円とピーク時の株価の4割5分程度と低迷している。経営指標として株価を重視する永守会長にとって、長年頭を悩ませてきた後継者問題に加えて新たな心痛の材料となっている。
同社の株価は、2021年2月16日に1万5175円の最高値をつけた。だが、その時から現在に至る2年間は下落基調に転じている。2021年6月、永守会長は日産自動車から一本釣りしてきた関潤氏に日本電産のCEOを任せた。この時の株価は1万3000円弱で、ここから株価は若干持ち直す。だが、2022年1月に大きく下落。1万3000円を超えていた株価が1月末には1万90円まで急落したのだ。そして、その2カ月後の3月以降現在に至るまで1万円を割り続けている。
ただし、業績は良かった。2022年3月期(2021年度)の連結決算(国際会計基準)は売上高も営業利益も過去最高を更新したからだ。ところが、下降線を描き続ける株価に永守会長は激怒した。この時、同会長は「こんな株価はありえない」「石か何かを投げて壊してやろうかと思うような株価」と吐き捨てている。
そして、2022年4月に株価は9000円を割り、この「低い株価」(同会長)と車載事業の赤字の責任を問われて関氏はCEOから最高執行責任者(COO)へと降格する。代わりにCEOに復帰したのが永守会長だ。ところが、それでも株価の下落は止まらない。CEOに復帰した直後、永守会長は「株価は今が底であり、購入を勧める」とまで語っていたが、2023年1月には6658円まで下落。そこからいったん7000円以上に戻したが、同年2月末からは7000円割れが常態化している。
「営業利益率10%未満は赤字」
7000円割れの株価には、2023年3月期(2022年度)第3四半期の決算発表で示した大幅な下方修正が大きく影響しているとみられる。2023年3月期の営業利益の予想を1000億円も引き下げたからである。2023年3月期の売上高は1000億円引き上げて2兆2000億円まで伸びるものの、営業利益は1100億円にとどまる見込みだ。これでは営業利益率は5%しか見込めない。
かねて永守会長は「営業利益率が10%に満たない事業は赤字だ」と社内に発してきた。この言葉に従えば、日本電産のCEOとしては「落第点」と言わざるを得ない。
大きく足を引っ張ったのは車載事業だ。次の成長の柱に据えた電動アクスル事業が大きな赤字を計上した。永守氏はこの理由について、前経営陣が問題を放置したため「大きな損害となった」と説明した。おまけに、これまで安定収益源だった主力のHDD(ハードディスクドライブ)用モーター(主軸モーター)が変調を来たしている。かつては営業利益率が10%を優に超える高収益事業だったが、2022年度第3四半期(9~12月)には4.5%まで低下。以前ほど稼げなくなりつつある。永守会長は「HDD用主軸モーターのビジネスはなくなる前提」とまで語っている。