浜松市は2023年2月に窓口業務支援の新システムを稼働させ、「書かない窓口」を開始した。7つの区役所を含む市内58カ所で大規模な窓口改革に取り組む。
第1弾として、住民票の写しや印鑑登録証明書、所得証明書など29種類の証明書の交付手続きを対象とした。書かない窓口では、窓口対応の職員が来庁者の本人確認を経て、発行する証明書の種類や枚数などを口頭で聞き取って新システムに入力すると、庁内の各業務システムのデータを基に必要事項を印字した申請書が作成される仕組み。来庁者は申請書を確認し署名するだけでよい。2023年6月からは、住民異動の届け出と異動に伴う国民健康保険や介護保険などの関連手続きも、書かない窓口の対象に加える。
申請受け付け後のバックオフィス業務については、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入したり、窓口・処理・審査の分業制を取り入れたり、区役所や協働センターなど計58カ所のフロアのレイアウトを変更したりするなど合理化を進めた。
職員が減っていくなかで人力では「限界」
「新たな業務が年々増えるなか、職員が複数の申請業務を覚えて対応する方法に限界が見えていた」。浜松市の中村美紀市民部市民生活課副参事は、窓口業務の改革に取り組む背景についてこう語る。浜松市は1993年から住民の証明書発行や届け出を1つの窓口で受け付ける「総合窓口」に取り組んできた。引っ越しや結婚、出生などのライフイベントの手続きを1つの窓口で完結できる「ワンストップ化」だ。一般に自治体の受付窓口は担当分野ごとの課に分かれている。
ワンストップ化は来庁者の利便性が高いが、従来の方法では窓口で対応する職員の負担が重い。1人の職員が複数の手続きを全て対応するため、窓口で対応する職員は幾つもの分厚いマニュアルに目を通し、手続きを覚える必要があった。そのため浜松市は窓口業務の属人化が進んでいた。新たに窓口業務に職員を配属した場合は、早くても半年、平均1年は研修期間にせざるを得なかった。しかし、近年新たな政策が増えるなかで、窓口対応する職員に求められる判断は複雑化してきた。人口の減少とともに職員が減っていくなかで、属人的なスキルに頼るのは限界だったという。
窓口業務の問題はほかにもある。窓口で対応する職員は、来庁者に申請書などの書類を渡して記入してもらい、それを受け取ってバックオフィスでシステムにデータを入力する。その際、誤記入や記入漏れ、読めない文字などがあり、それを記入した来庁者に確認するのに時間がかかる。