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 「10人も集まるだろうかと危惧していたが、蓋を開けてみれば、30人以上が応募した。研修を2回転させることになった」。損害保険ジャパンの石井真澄IT企画部計画推進グループ課長代理は声を弾ませる。

 損保ジャパンは2022年11月、システム開発を主導できる人材を育成する「次世代システム対応人材育成プログラム」を開始した。システム開発の流れを理解し、業務要件定義の進め方を体系的に学ぶための研修プログラムだ。業務要件定義に必要な問題分析やコミュニケーションについても演習を実施する。

 従来は業務要件定義においてベンダーやコンサルティング会社の力を借りていたが、事業部門が主体的にビジネス要件を出せるようになることを目指す。2025年度までに300人を受講させる計画だ。

「次世代システム対応人材育成プログラム」の研修光景
「次世代システム対応人材育成プログラム」の研修光景
(写真:損害保険ジャパン)
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「何から手を着ければいいのか分からない」状態

 「業務要件定義書の書き方は教えられても、業務要件定義の前提となる、どうやって問題を深掘りしていけばいいのかという点については教えるのが難しかった」。従来実施していた研修の課題について石井課長代理はこう話す。

 システム化案件の担当に就くと、本来は業務の整理から着手しなければならない。しかし、現場では「何から手を着ければいいのか分からなかったり、システムのことだけで頭がいっぱいになり、いきなり『何をしたいか』から業務要件定義を始めてしまったりしたという課題があった」(石井課長代理)。

 業務要件定義が不十分だと、開発途中での要件変更や追加に追い込まれがちだ。結果として、開発費用が膨らんで当初期待したコスト削減効果が見込めなかったり、ユーザーの満足度が低く利用率が上がらなかったりといった問題も起こった。

 業務要件定義ができる人材が不足していたことから、ベンダーやコンサルティング会社など外部人材の力を借りることがあった。その分のコストがかかるうえ、社内にノウハウが蓄積されないという問題も生じた。

 こうした「ベンダーやコンサル任せ」の課題を解決するには「システム開発の流れを理解したうえで、自分たちのビジネスをフローに落とし込み、何が課題なのかしっかり洗い出せるような人材を自社で育成する必要がある」(損保ジャパンIT企画部計画推進グループの齋藤貴仁グループリーダー)と考え、本研修を開始した。