核融合科学研究所(NIFS、岐阜県土岐市)は2023年3月9日、核融合スタートアップの米TAE Technologies(TAEテクノロジーズ)と共同で、放射線リスクのない核融合を世界で初めて実証したと発表した。核融合燃料に軽水素(プロチウム、pまたは1H)とホウ素11(11B)を使うことで、人体に有害な放射性物質を排出しない核融合反応を実証した。
核融合科学研究所とTAEテクノロジーズの研究チームが実施した実証実験では、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)を使用した。磁場で閉じ込めた高温のプラズマの中で軽水素とホウ素11を核融合させ、反応によって生成した高エネルギーヘリウムを検出することで核融合反応を確認した。軽水素とホウ素11は「先進的核融合燃料」と呼ばれ、これらを使った核融合反応の実証は世界で初めてという。
実験は2022年2月に実施していた。詳細な分析を経た後、2023年2月21日に科学雑誌Nature Communications(ネイチャーコミュニケーションズ)に研究成果が掲載された。
Nature Communicationsに掲載された論文「First measurements of p11B fusion in a magnetically confined plasma」
今回の実証で燃料として使った軽水素とホウ素11は放射性物質ではなく、反応で中性子も生成しないので安全性が高いとされる。生成物として高エネルギーヘリウムがアルファ線として生成するものの、すぐに無害化するためヘリウムガスとして核融合炉から安全に排気できるという。