三菱自動車は2023年3月10日、新たな中期経営計画(2023年度から2025年度)を発表した。自動車業界の大変革期に対応するため、地域戦略や商品戦略などを刷新し、収益基盤を強化して持続的な成長の実現を目指す。
同日に東京都内で開いた会見で、同社社長兼CEO(最高経営責任者)の加藤隆雄氏は、「5年後(2028年度)以降の当社のあるべき姿を見据えて今回の計画を作った」と強調した(図1)。
地域戦略では従来の「選択と集中」をさらに強化し、各地域の役割を明確にしたうえで経営資源を配分する。地域は3つに分ける。具体的には、「ASEAN(東南アジア諸国連合)とオセアニアの成長ドライバー地域」、「中南米と中東、アフリカのレバレッジ地域」、「日本と北米、欧州、中国の先進技術推進地域」である。
第1の成長ドライバー地域に経営資源を集中させ、販売台数とシェア(市場占有率)、収益の拡大を目指す。第2のレバレッジ地域ではASEAN向け車両を最大限に活用し、第2の事業の柱に育てる。先進技術推進地域では、フランスRenault(ルノー)グループと日産自動車、三菱自の日仏3社連合(アライアンス)や協業パートナーを活用し、先進技術の開発を推進する。
2035年度に完全電動化
商品戦略では電動化を加速させ、電動車両の世界販売比率(電動化比率)を2030年度に50%、2035年度に100%にする。現行の中期計画(2020年度から2022年度)では、2021年5月のアップデートの段階で、「2030年度までに全車種で電動車両を設定し、同年度の電動化比率を50%にする」としていた。今回の新たな中期計画ではより踏み込んで、2035年度の完全電動化を打ち出した。
こうした電動化計画に基づき、今後5年間(2028年度末まで)で世界市場に16車種の新型車を投入する。そのうち9車種を電動車両にする計画だ。成長ドライバー地域とレバレッジ地域については今後5年間で、12車種の新型車を投入する。そのうち7車種が電動車両になる。
各市場に投入する車種として三菱自は、ピックアップトラックと2列シートSUV(多目的スポーツ車)の電気自動車(EV)、2列シートSUVと中型SUV「エクスパンダー」、MPV(多目的車)のハイブリッド車(HEV)、アライアンスからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けるEVなどを挙げた(図2、3)。