米連邦預金保険公社(FDIC)は米国時間2023年3月10日、米銀シリコンバレーバンクが経営破綻したと発表した。スタートアップへの積極的な融資で知られる同行は、同日に事業を停止。当局は上限付きの預金保護を発動した。週末にかけて米国では衝撃が広がり、リスク回避姿勢が強まっていたところに、急転直下、米財務省などが預金の全額保護を表明。信用不安が広がりつつあった事態を回収する緊急措置だ。週末の騒動を解説する。
関連記事: 預金全額保護の米シリコンバレーバンク、テック企業の危機は去るか米国時間2023年3月10日午前、米銀シリコンバレーバンク(SVB)のパロアルト支店前。15人ほどの預金者が小雨の中、落ち着かない様子で支店の前を行ったり来たりしていた。スタートアップの財務担当者だと話した男性は「9日夕方に依頼した送金が止まっている」として預金の行方を不安がる。預金額は明かさなかったが「少なくはない」と打ち明けた。カリフォルニア州サンタクララの本店でも、同様に預金者などが詰めかけた。
3月10日早朝にFDICがSVBの経営破綻を発表し、現地では衝撃が走った。米連邦準備理事会(FRB)によれば同社の総資産は2022年末時点で約2090億ドル(約28兆円)。全米16位の資産規模を持つ。銀行破綻では、2008年9月の金融危機で経営破綻したワシントン・ミューチュアルについで史上2番目の大きさだ。FDICが監督する銀行では2020年10月に破綻したアルメナ州立銀行以来、2年半ぶりの破綻となる。
FDICが破綻管財人となり、上限付きの預金保護を発動した。FDICによる保護の上限は1口座当たり25万ドル。数年前までSVBと銀行取引があった起業家は「個人向けでは十分な額かもしれないが、企業預金では“すずめの涙“の預金保護だ」と話す。3月13日に預金者からのアクセスを再開するとしていた。
週末にかけて米国では衝撃が広がり、リスク回避姿勢が強まった。米国の起業家の1人は「他の中小銀行でも同様の事態が発生する恐れがあったため、知人の起業家も含め、預金を全て比較的安全だと思われる金融機関に移動した」と打ち明ける。
週明け13日のSVBの営業再開を多くの預金者が不安を抱きながら待っていた12日午後、事態は急展開した。米財務省などが「預金の全額保護」の公式声明を発表。機能不全が金融システム全体に波及する「システミックリスク」を避けるための例外措置とした。
声明によれば、イエレン財務長官がバイデン大統領と協議の結果、預金保護を承認した。「3月13日から全ての資金にアクセスできるようになる」とし、「シリコンバレーバンクの破綻処理に伴う損失が納税者に負担されることはない」と明言した。
急転直下の3日間、なぜSVBは破綻し、財務省は救済措置を取ったのか。これまでの経緯を振り返ろう。