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いすゞ自動車が全面改良して2023年3月7日に発売した小型トラック「エルフ」は、日立Astemo(アステモ)が開発した最新の広角ステレオカメラを採用して、予防安全性能を強化した。同カメラに加えて、近距離用ミリ波レーダー(77GHz帯の周波数に対応)と運転者状態監視システムを搭載することで、9つの機能を新たに実現した。このうち7つは、国内向け小型トラック初となる機能である。
いすゞは改良前のエルフ(以下、先代車)にも、ADAS(先進運転支援システム)用の主要センサーとして、日立アステモのステレオカメラを使っていた。新型エルフ(以下、新型車)に採用した同社の新型ステレオカメラは、先代車のステレオカメラの検知距離を維持しながら、広角化したのが特徴である(図1)。
ステレオカメラを120度に広角化
新型車ではADAS用センサーとして、新型ステレオカメラとミリ波レーダーを使う。ステレオカメラはダッシュボード上に1個、ミリ波レーダーは前部バンパーの中央と左右に合計3個搭載した(図2、3)。ミリ波レーダーは日立アステモが海外のメーカーから調達し、ステレオカメラと一緒にいすゞに供給した。
日立アステモの新型ステレオカメラは、2個の単眼カメラで撮影する範囲をずらす方式を採用した。左側のカメラで右前方を、右側のカメラで左前方を撮影する。左右のカメラで撮影した映像が重なる範囲にある対象物を、ステレオ視によって立体物として認識する。ステレオ視する場合の水平視野角(画角)は約60度である。
左右のカメラでそれぞれ撮影した周辺部は、単眼視によって対象物を検知し、時系列の画像処理によって立体物として認識する。単眼視する場合の画角は約120度まで広がる(図4)。