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 米Analog Devices(アナログ・デバイセズ、以下ADI)は東京本社において、同社の超低雑音スイッチング電源IC技術「Silent Switcher 3」の紹介とデモンストレーションを報道機関に向けて2023年3月7日に行った(図1、図2)。Silent Switcher 3ベースのDC-DCコンバーターICは2021年から特定顧客向けにサンプル出荷しているが、新型コロナウイルスの影響によってアジアの生産拠点の体制がなかなか安定しなかった。その影響が薄れたことで量産出荷のめどが立ち、今回、報道機関向けに製品を披露した。

図1 登壇したアナログ・デバイセズの藤田 太朗氏
図1 登壇したアナログ・デバイセズの藤田 太朗氏
同氏はインダストリアル ビジネスグループ パワーのシニアマネージャーである(写真:日経クロステック)
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図2 デモンストレーションのシステム構成
図2 デモンストレーションのシステム構成
左上に拡大表示されたプリント基板に載ったSilent Switcher 3ベースのDC-DCコンバーターIC「LT8625SP」の雑音性能を評価した。この基板はテーブルの中央やや左方にある。比較対象はSilent Switcher 1および同2ベースのDC-DCコンバーターICである。3つのICの雑音を、テーブル手前中央にあるスピーカーの音とテーブル左方の計測器の波形出力で比べて、低雑音であることをアピールした。右方のディスプレーには計測器画面が拡大表示されている(写真:日経クロステック)
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 一般にDC-DCコンバーターと呼ばれる直流電圧変換回路には大きく分けて、LDO(Low Drop Out)レギュレーター(リニアレギュレーター)とスイッチングレギュレーターの2種類がある(図3)。前者は低雑音だが変換効率が低い。後者は変換効率が高いが雑音が大きい。スイッチング周波数を上げることで回路を小型化できるため、スイッチングレギュレーターが主流になっている。

図3 LDOレギュレーター(左)とスイッチングレギュレーター(右)
図3 LDOレギュレーター(左)とスイッチングレギュレーター(右)
(出所:ADI)
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 スイッチングレギュレーターの泣きどころである雑音を抑えるための技術が、Silent Switcherである(図4)。第1世代のSilent Switcher(Silent Switcher 1)はADIに買収される前の米Linear Technology(リニアテクノロジー)が2013年に実用化した*1。第2世代の「Silent Switcher 2」をベースにした製品は2017年に登場している*2

関連記事 *1 Linear Technology、EMIを従来比で20dB低減できる降圧型DC-DCコンバータICを発売 *2 Analog Devices、EMIを大幅低減した降圧型DC-DCコンIC
図4 Silent Switcherの歩み
図4 Silent Switcherの歩み
(出所:ADI)
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 Silent Switcher 1では回路技術と実装(パッケージング)技術の両方で工夫した。すなわち、回路技術では入力コンデンサーの配置方法の工夫を、実装技術ではチップ(ダイ)とリードフレームの接続の工夫を施した。これで、EMI雑音を低減するとともに、スイッチング周波数を高めて効率を向上させた。Silent Switcher 2ではSilent Switcher 1の技術に加えて、実装にさらに工夫を加えた。すなわち、2つの入力コンデンサーをパッケージに内蔵した。これによって、小型化とEMI雑音のさらなる低減が図れた。