スイスSTMicroelectronicsの日本法人STマイクロエレクトロニクスは、2023年3月9日に東京の本社で報道機関向け説明会を開き(図1)、最近3カ月間に発表したArmコアベースのマイコン/マイクロプロセッサー(MPU)を合わせて5製品紹介した(以下では、グローバルの本社を指す場合をSTMicroelectronics、日本法人を指す場合をSTマイクロエレクトロニクスと区別する)。登壇したSTマイクロエレクトロニクスの石川義章氏(マイクロコントローラ&デジタル製品グループ マイクロコントローラ製品部 部長)によれば、STMicroelectronicsは汎用マイコン市場(車載マイコンとセキュアーマイコンを除いたマイコン市場)において2021年にシェアが第1位になった(図2)。このポジションの維持を狙い*1、今回、短期間に複数の新製品を投入したようだ。
石川氏によれば、STMicroelectronicsが汎用マイコン市場で勢力を伸ばせたのは、32ビットのArmコアをベースにしたマイコン「STM32ファミリ」を積極的に投入してきたためである。32ビット汎用マイコン市場では、ライフサイクルが長いエッジ機器向け製品が有望だという。例えば、生活家電機器は高効率化やクラウド接続機能の実装により8ビット/16ビットマイコンから32ビットマイコンへの移行が進み、同機器向けの32ビットマイコン市場では2021~2026年の平均年間成長率(CAGR:Compound Average Growth Rate)が26%に達するという。FA(Factory Automation)やビル&ホームコントロール向けでもCAGRは9%が見込めるとした。
STMicroelectronicsは32ビットマイコンやMPUの強化に向けて、(1)新製品の積極投入、(2)応用開発向けツールやエコシステムの拡充、(3)生産能力の拡大を進めている。(1)に関して、マイコンとMPUを合わせて、2023年1~3月の3カ月間に5つの新製品を発表した(図3)。また、(3)に関して、同社は300mmウエハーの生産能力を強化しているとした(図4)。2025年の300mmウエハー生産能力を2022年の2倍にする目標である。プロセス世代は90nmと40nmを想定している。28nmについては「将来はマイコン/MPUに使うかもしれないが、今のところ具体的な予定はない」(石川氏)という。