2023年3月1日、2024年春に卒業予定の学生を対象にした企業の採用広報が解禁となり、就職活動シーズンが本格化した。学生優位の「超売り手市場」と言われ、人材獲得競争が激しさを増すなか、ITサービス大手はどのような施策を講じるのか。日経クロステックはITサービス大手10社に対して、2024年度新卒採用に関するアンケートを実施した。
アンケートの結果からまず言えるのは、IT各社の採用意欲は総じて旺盛だということだ。2024年度の新卒採用人数は、BIPROGY(旧日本ユニシス)が2023年度入社見込み人数と比較して27%増の140人、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が同19%増の260人、野村総合研究所(NRI)が同12%増の450人を計画する。背景の1つには、国内でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に伴い、IT人材の需要が増していることがある。この傾向は当面変わらないだろう。
2024年度新卒採用予定数(人) | 2023年度入社予定数(人) | 初任給引き上げに関する考え | |
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BIPROGY(旧日本ユニシス) | 140 | 110 | 検討中 |
NEC | 前年並み | 600 | 2023年春季交渉で大卒初任給を1万円引き上げて23万7000円に |
NTTデータ | 700 | 677 | 引き上げる考えあり(2023年3月15日時点) |
SCSK | 300 | 283 | 2020年7月の給与改定で、大卒初任給を26万6500円から31万円へ引き上げ |
TIS | 250 | 279 | 2023年4月から、若手などに重点投資し基本給を最大17%アップ、大卒初任給は25万円に引き上げ |
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) | 260 | 218 | 2023年4月入社から従来の大卒初任給23万円を29万5500円へ引き上げ |
日本IBM | 850 | 804 | 2022年に初任給を引き上げ済み。職種により入社数カ月の研修後に昇給を予定 |
野村総合研究所(NRI) | 450 | 400 | 2023年4月から初任給を引き上げ |
日立製作所 | 600 | 600 | 2023年春季交渉で大卒初任給を5000円引き上げて23万2000円に |
富士通 | 800 | 1000 | 2023年春季交渉で大卒初任給を23万円から23万5000円に |
優秀な学生を獲得するため、ITサービス大手各社は思い切った手を打つ。このこともアンケートの結果から明らかになった。浮かび上がったキーワードは「初任給の引き上げ」と「ジョブ型」である。
CTCは2023年4月入社から、従来は23万円だった大卒初任給を29万5500円へと引き上げる予定だ。金額にして6万5500円アップとなる。
TISは2023年4月から基本給を平均6%、若手層などに対しては最大で17%引き上げることを決めた。大卒初任給は22万3000円から2万7000円上げて25万円にする。「新卒獲得のためいろいろな施策に取り組んでいるが、目玉は報酬戦略になると思う」(TIS広報)。
SCSKは2020年7月に、人材獲得を強化するための給与改定を実施済みだ。それまで20時間分の残業代と学び手当などを含めて26万6500円だった大卒初任給を4万3500円上げて31万円としており、2024年度の新卒採用でもこれを維持する。
2023年3月15日時点でNTTデータは「引き上げる考えあり」、BIPROGYは「検討中」と回答しており、IT各社が初任給を引き上げる動きは今後も続きそうだ。