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 車室空間側から高齢運転者を支援する――。そんな構想を明らかにしたのが、パナソニックグループのパナソニックオートモーティブシステムズ(横浜市)である。近年、高齢運転者による事故が増えている。その大きな要因は、主に「身体機能の衰え」と「安全意識の低下」にあるとみられている。それらを補完できるように車室空間側を工夫することで、そうした事故を低減できる可能性がある。

 同社は3年ほどかけ、約6万人の高齢運転者を対象に1人当たり延べ10時間ほどのヒアリングを実施した。そこから見えてきたのが、高齢運転者が抱える様々な課題だ。中でも同社が注目したものの1つが、前述の身体機能の低下だ。同社シニアデザイナーの増田拓眞氏によると、「60歳代はまだまだ元気な人が多いが、70歳代から急に(身体機能が)落ちてくる」からだ。

 そしてもう1つが、同様に事故の大きな要因とみられている安全意識の低下だ。「70歳以上になると、長い人だともう50年近く運転してきている。自分なりの運転というものを身に付けている」(同氏)。そんな慣れが運転に対する過信を生み、場合によっては安全意識の低下につながる。「社会も交通も時代の流れに合わせてどんどん変化している。今の時代に合わせてもう1度安全に対する意識をアップデートする必要がある」と、同氏は訴える。

 そこで同社が考えたのが、この2点について高齢運転者を車室空間側からしっかりと支援することだ。「高齢運転者の中にはどうしてもクルマを手放せない人がいる。そうした中で、長く安全にクルマに乗ってもらえるようにするのが、我々の責務だと思っている」(同氏)とその思いを語る。

 興味深いのは、そうした支援を、踏み間違い防止装置のように「走る、曲がる、止まる」といった運転行為そのものに対して行うのではなく、高齢運転者に寄り添うような形で車室空間側から実施するアプローチを考えている点だ(図1)。

図1 パナソニックオートモーティブシステムズが考える車室空間からの高齢運転者支援の方向性
図1 パナソニックオートモーティブシステムズが考える車室空間からの高齢運転者支援の方向性
「身体機能の補完」と「安全の意識づけと習慣化」を柱とする。(出所:パナソニックオートモーティブシステムズのプレゼンテーション資料を日経クロステックが撮影)
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