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 ホンダが、米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)と共同開発した次世代燃料電池システム。2024年にはSUV(多目的スポーツ車)「CR-V」をベースにした車両に搭載し、燃料電池車(FCV)として北米と日本で販売する予定だ。生産性を改善することで、FCV「クラリティフューエルセル」の2019年モデルに搭載したシステムに対して、コストを3分の1に低減したのが特徴だ。併せて、耐久性や耐低温性も向上した。

次世代燃料電池システム
次世代燃料電池システム
生産性改善によってコストを低減した。(写真:日経Automotive)
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セパレーターに工夫

 同社事業開発統括部 水素事業開発部 商品技術企画課 チーフエンジニアの清水潔氏は「詳細はまだ明かせない」としたうえで「コストを3分の1に低減できた大きな理由は、生産性を上げたことだ」と話す。燃料電池セル自体の構造をシンプルにすることで、加工にかかるコストを低減できた。これにより製造面でのコストダウンが図れたという。

次世代燃料電池システムの裏側
次世代燃料電池システムの裏側
(写真:日経Automotive)
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 具体的には、セルの間に挟むセパレーターを工夫した。セパレーターは水素(H2)や酸素(O2)の流路を備えた板状の部品だ。「ホンダは昔から金属セパレーターを使用して、プレス成形してきた」と同氏は語る。金属のほかにも炭素系材料で作るカーボンセパレーターがあるが、金属セパレーターはカーボンセパレーターに比べて、量産や加工がしやすい利点がある。次世代燃料電池システムでは、さらに加工しやすい設計にすることで生産性が改善したという。

 MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)の材料を変更し、白金(Pt)の量を減らしたのもコスト低減に効いている。触媒材料である白金はコストの高さが課題とされてきた。清水氏は「ホンダはこれまで、白金の量を段階的に低減してきた」とした上で、今回はクラリティフューエルセルからさらに減らせたという。

ホンダのFCVにおける取り組み
ホンダのFCVにおける取り組み
2024年にはCR-Vベースの新型FCVを発売する予定だ。(出所:ホンダ)
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 耐久性は、クラリティフューエルセルから2倍以上に向上した。その大きな要因がソフトウエア制御の変更だ。燃料電池は、水素と酸素を化学反応させて電気を発生させる仕組みだ。出力要求が大きいと、化学反応時にシステムに大きな負荷がかかり、耐久性に影響が出てしまう。そこで「電池をうまく使いながら、燃料電池の負荷を軽減する制御に変更した」と同氏は語る。併せて、触媒を含む化学反応の関連材料もより耐久性の高いものに変更した。