トヨタ自動車は、同社の燃料電池(FC)技術を生かした水電解(Water Electrolysis:WE)用セルとそれを積層した水電解用スタックを開発し、展示会「第19回 FC EXPO【春】」(東京ビッグサイト、2023年3月15~17日)に出展した(図1)。
水電解は、水を電気分解して水素(H2)を取り出す技術。それに再生可能エネルギー由来の電力を用いれば、その水素はグリーン水素と呼ばれる。
実はこの水電解は、酸素(O2)と水素を基に発電する燃料電池の逆の反応でもある。このため、燃料電池セルを水電解セルに転用することは比較的容易だ。
製造コストの低減にもなる
実際、トヨタ自動車は同社がこれまで開発してきた固体高分子形燃料電池(PEFC)の技術を用いて、固体高分子膜(PEM)型水電解セルを開発した。両セルの形状はほぼ同じ。材料の多くも共通点が多い(図2)。トヨタ自動車は「部品と製造工程を90%以上共通化できる」という。これは製造コストの低減につながる。
ちなみに、大きく異なるのは2点。1つは、酸素極を覆う層が燃料電池セルでは気体のO2が通過するガス拡散層(GDL)だが、水電解セルでは水素イオン(プロトン)が通るプロトン輸送層(PTL)になっている点。もう1つは、触媒が燃料電池セルでは白金(Pt)だったのに対して、水電解セルではイリジウム(Ir)系材料になっている点だ。