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 東芝三菱電機産業システム(TMEIC)は開催中の展示会「第19回 スマートエネルギーWeek 春」(東京ビッグサイト、2023年3月15~17日)で、日本国内に重力蓄電システムを設置し、事業化していく計画を明らかにした。同社のブースでは、重力蓄電システムのコンセプト模型を出展した(図1)。同社は、これまでの主軸事業だった産業用インバーターやコンバーターだけでなく、電力を作り出したり蓄電して運用したりする、発電事業に近い事業を開拓していくという。

図1 TMEICが重力蓄電システムを採用する理由と実証、運用までの計画
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図1 TMEICが重力蓄電システムを採用する理由と実証、運用までの計画
(写真:TMEICの出展パネルを日経クロステックが撮影)

やや長期の電力ストレージに向く

 重力蓄電システムは、電力のエネルギーを“重り”の物理的な位置エネルギーに変換して“蓄電”し、必要な時にその位置エネルギーを電力に戻すシステム。この定義上は揚水発電システムなども含まれるが、最近、スイスや英国のベンチャーが提唱した、数十トンのコンクリートブロックを巨大なクレーンやウインチで昇降させるシステムを指すことが多い。ブロックの材料に廃材などを使えば、低コストでシステムを構築できるうえに、“蓄電”したエネルギーが時間の経過で低減していくことがないという特徴がある。このため、数秒~数時間という比較的短期間の充放電に使うよりは、数日以上のやや長い期間、電力を“保管”できるシステム「Long-Duration Energy Storage (LDES)」として注目を浴びている。

 TMEICは、国内でも大容量の蓄電システムが求められる中、この重力蓄電システムには、(1)揚水発電よりは必要な用地規模が小さく環境負荷も低い、(2)リチウム(Li)イオン2次電池のような有機溶液やレアメタルもほとんど必要としない、(3)温度や経年劣化でエネルギー容量が減少しない、(4)容量は重りを増やすことで拡大できる、などのメリットがあるとする。

 同社は、まずは10M~40MW規模のシステムを2025年までに建設して実証し、2027年の運用開始を目指すという。