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 岐阜県大垣市に本店を置く大垣西濃信用金庫は、各種業務の稟議(りんぎ)や決裁に使うワークフローシステムをノーコード開発ツールで内製した。2023年3月中旬までに紙ベースで行っていた100以上の業務手続きを電子化し、紙の削減や稟議・決裁の短縮などにつなげたと明らかにした。

大垣西濃信用金庫の本店
大垣西濃信用金庫の本店
(写真:大垣西濃信用金庫)
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 ワークフローシステムを導入したきっかけは、2016~2017年ごろに遡る。業務改善などのアイデアを出す社内制度の下、ある職員が「紙の書類による稟議や決裁を電子化できないか」と提案した。

紙処理だった事務系や人事、総務関連の手続き

 当時は融資や営業活動の報告といった対顧客業務の確認や稟議・決裁の仕組みは電子化が進んでいた。一方で、「支払いや資金関連の決済、休日届けの申請といった事務系や人事、総務関連の手続きは電子化されていなかった」とデジタル推進部の岡本誠部長は説明する。紙書類の押印による稟議や決裁が続いていた。

業務手続きの電子化の流れ
業務手続きの電子化の流れ
(出所:取材を基に日経クロステック作成)
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 大垣西濃信用金庫では、簡易的なワークフロー機能を備えるグループウエアを以前から運用していたものの、ワークフロー機能は使っていなかった。多様で複雑な承認ルートを構築できなかったためだ。特に複雑な手続きでは、30個以上の押印が必要だったという。

 とはいえ、複雑な手続きは完了までに膨大な時間がかかっており、紙ベースの業務スタイルでよいわけではなかった。近年、地方の金融機関を取り巻く経営環境は厳しさを増し、業務の効率化や意思決定のスピード向上が求められている。

 そこで全体での抜本的な業務改革に向けて、ワークフローシステムを導入する検討を進めた。業務改善やBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング、業務プロセス改革)を所轄する経営企画部が中心となって検討し、2019年3月ごろに活動を具体化させた。

 まず2019年3月から2020年9月にかけて、紙ベースの業務手続きを洗い出し、それぞれをワークフローシステムに落とし込めるかどうかを各部署で検討した。岡本部長は「不要な承認ルートの見直しなども進めた」と説明する。

 並行して経営企画部では、ワークフローシステムを内製する前提でノーコード開発ツールの選定を進めた。システムを内製にする前提にしたのは理由があった。当時、経営企画部業務効率改善課の課長としてシステム導入を担当した現・事務統括部事務支援課の米溪久人課長は「業務を熟知する職員が自ら開発を手掛けたほうが迅速かつ柔軟に対応しやすいと考えた」と話す。

 検討を重ねた結果、キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)の「WebPerformerWf」を採用した。複雑な承認ルートに対応できる点などを評価した。