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 上場企業を中心とした有価証券報告書の提出を義務付けられている企業は今、ESG(環境・社会・企業統治)をはじめとする非財務情報を開示するための準備が急務になっている。金融庁が2023年1月31日、非財務情報の開示について定めた「企業内容等の開示に関する内閣府令」を公布し、2023年3月31日以後に終了する事業年度の有報から適用を開始すると発表したからだ。

 今回の内閣府令では、サステナビリティー(持続可能性)や人的資本に関する開示などが義務付けられている。「女性管理職比率」や「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」の開示も必要な場合がある。対象となる企業は非財務情報の基となるデータを収集・管理し、開示するための仕組みを整えなければならない。

 こうしたなか、非財務情報の収集や管理を支援するクラウドサービスが相次ぎ登場している。

グループ企業や供給網からのデータ収集も支援

 その1つがbooost technologiesが提供する「booost Sustainability Cloud」だ。同社の大我猛COO(最高執行責任者)は、「非財務情報の開示に関するアンケート結果を見ると、現在の大きな課題は情報の収集に時間がかかることだ。まずは効率的なデータ収集と自動集計を支援する機能を提供していきたい」と説明する。

 booost Sustainability Cloudは二酸化炭素(CO2)の排出量を算定する「booost GX」、サプライチェーン(供給網)全体でのCO2の削減状況を可視化する「booost Supplier」、そしてCO2に限らず、環境や人的資本といったESG全般のデータを管理する「booost ESG」の3つのサービスで構成する。このうち新製品はbooost Supplierとbooost ESGだ。同社は以前からCO2排出量の算定支援に注力しており「booost GX」は既存製品から名称を変更した。

booost Sustainability Cloudの画面例(booost Supplierの例)
booost Sustainability Cloudの画面例(booost Supplierの例)
(画像提供:booost technologies)
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 booost Sustainability Cloudの特徴は、3つのサービスを組み合わせることでグループ企業やサプライチェーンからのデータ収集を支援することだ。特に非財務情報の収集・管理の中心となるのが、ESG関連データを管理するbooost ESGである。

 booost ESGは環境、社会、ガバナンスのそれぞれの領域について、収集すべきデータ項目を事前に用意している。booost ESGを利用する企業はまず、booost ESGが用意した項目の中から自社の方針や法規制を踏まえて収集したいデータ項目を選ぶ。それらの項目についてグループ会社やサプライヤーにbooost ESGの機能を利用して回答を依頼し、booost ESGに直接データを入力してもらう。収集したデータはbooost ESGが用意したダッシュボードを通じて可視化するといった使い方を想定している。

 「将来的にはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)経由でデータを自動取得したり、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを用意したりすることで、データ入力の手間を効率化したい」と大我COOは話す。主な顧客として日本のグローバル企業を想定している。グループ会社やサプライヤーが海外にある企業も多いことから、25言語に対応した。booost ESGの提供開始はベータ版が2023年4月から。ベータ版は使い勝手などをフィードバックする代わりに利用料を3カ月無料とし、同年7月から有償の正式版を提供する予定だ。