建設機械部品などを手掛ける中小企業のコマテック(石川県小松市)は約500kgあるワークを工作機械に着脱する段取りを自動化した。大型の多関節ロボットで工作機械上にワークを搬送し、ロボットと連携した治具が自動でワークを固定する。従来は人がクレーンでワークを搬送し、手作業で治具にワークを固定していた。同社は強い引き合いや人手不足を背景に自動化システムを導入。人を増やさずに、設備増強だけで生産能力を6割増やせた。
コマテックは大手建機メーカーのショベルカーを構成する部品のうち、「トラックフレーム」と呼ぶ下部走行体向けの骨格部品で高いシェアを誇る。同部品は「X」字に近い形で、中心部にはアームや操縦席といった上部機構を旋回させる装置を組み付けるための大きな丸い穴が設けてある。金属部品を溶接後に、丸い穴の周辺を門型五面加工機で切削加工して造る。大きさは2m弱、質量は約500kgと重量級だ。
同社のトラックフレームの引き合いは過去10年間右肩上がりで、近年は年間10%程度需要が増えているという。生産能力の増強が求められる一方、人手不足が課題だった。そこで、日本電産マシンツール(滋賀県栗東市)が構築する自動化システムを2022年秋にコマテックの額見工場(石川県小松市)に導入した。
自動化システムは、ワークを最大5つまで重ねられるストッカー、ファナックの大型多関節ロボット「FANUC Robot M-900iB/700」、五面加工機上にセットした治具などからなる。加工時は、まず人が工場内の別エリアで溶接したワークをフォークリフトで運び、ロボットの横にあるストッカーに積み上げる。
次に五面加工機に元から備わっているパネルなどを操作し、自動化システムを起動。すると、多関節ロボットがストッカーに積み上げたワークを把持(はじ)し、五面加工機上に運ぶ。ロボットにはカメラが付いており、ワークを画像認識する。そのため、溶接の加減でワークの形状に若干のばらつきがあったり、フォークリフトでワークを置く位置が少しずれたりしてもロボットはワークをつかめるという。
ロボットが五面加工機に載った治具上にワークを搬送すると、治具に信号が送られ、クランプがワークを自動で固定する。固定が終わると、切削加工が始まる。加工終了後は、再びロボットがワークをつかみ、加工済みのワークを積み上げるためのストッカーへと搬送する。