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 あいおいニッセイ同和損害保険は2023年2月27日、米Microsoft(マイクロソフト)のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール「Power Automate Desktop(PAD)」を全社員に展開した。さらに、米OpenAI(オープンAI)の大規模言語モデルGPT-4を組み込んだマイクロソフトの検索エンジン「Bing」のチャット機能を応用。PADで利用するスクリプトをAI(人工知能)チャットに生成させる研究も始めた。

 PADの全社員への展開から2週間が経過した2023年3月13日時点で、既に333人が自動化のプログラムに相当する「フロー」の開発に着手した。このうち44人が独力で開発を完了し、73件のフローが稼働している。例えば、有給休暇の申請システムに必要な事項を入力する作業などのフローができたという。RPAを通じて現場主導の業務改善を目指す。

個人単位の業務を自動化

 あいおいニッセイがPADを導入した目的は、社員が個人単位で業務改善に取り組めるようにすることだ。同社は以前に別のRPAツールを導入したが、このときは社内の複数の部門を横断するような大規模な業務を中心に自動化に取り組んだ。一方で、社員一人ひとりの作業を自動化する活動は見送った経緯がある。

 社員に業務改善のニーズがなかったわけではない。RPAを活用する業務改善のアイデアを社員に募ったところ、2000件を超える案が集まった。ただ、集まった案の多くは社員の身の回りの作業が対象で、「当時導入したRPAツールは、個人の作業に使うにはコストが見合わなかった」(業務プロセス改革部ソリューション開発グループの釣田貴司グループ長)。

 その点、PADはパソコンで稼働するソフトで実施する定型的な処理を自動化するツール。社員一人ひとりが自身の作業を効率化するニーズに合うと判断した。

 RPAの全社展開と並行して、大きく3つの普及施策を始めた。1つ目は、ツールに触れてみる機会づくり。具体的にはマイクロソフトのコミュニケーションツール「Teams」で質問できるチャットを作ったり、ショートセミナーを開催したりしている。2つ目は、フローを開発できる「中核人材」の育成。2023年4月から教師役のシステムエンジニアを各部門に派遣し、社員によるフロー開発を支援する。

あいおいニッセイ同和損害保険が手がける、Power Automate Desktopの普及施策
あいおいニッセイ同和損害保険が手がける、Power Automate Desktopの普及施策
(出所:あいおいニッセイ同和損害保険の資料を基に、日経クロステックが作成)
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 3つ目の施策が、GPT-4を搭載するBingのチャット機能の活用だ。やや複雑な作業を自動化するニーズに生かせると釣田グループ長は見込んでいる。