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 セブン―イレブン・ジャパンの取引先工場が挑む品質管理DX(デジタル変革)が成果を上げつつある。弁当・総菜をつくる工場の衛生管理や品質管理に関するデータをタブレットのアプリに入力してクラウド上に集約。紙の帳票と手作業に頼っていた点検作業や管理業務の効率化を図り、トラブルの未然防止にも役立てている。

 「現場視点で様々な改善ができるのが一番のポイント。今までは難しかった現場の実態をよりリアルに把握でき、トラブルの未然防止にも効果が出ている」。セブン―イレブン・ジャパンの斉藤俊二QC・物流管理本部QC部総括マネジャーは、デジタル技術を生かした工場の品質管理改革の成果をこう語る。

セブンの弁当・総菜工場の8割が導入

 セブン―イレブンの取引先工場が採用したのは情報共有支援スタートアップ、カミナシが開発・提供する同名の電子帳票作成システムだ。セブン―イレブン向けの弁当や総菜、サンドイッチなどの日配品をつくる176の工場のうち8割に当たる139工場が2023年3月までに導入した。

 同システムを使えば、プログラミングの知識がなくても工場や店舗で使われている紙の帳票を基に業務アプリをノーコードで開発できる。現場の担当者は作業手順のチェックや点検結果の入力、集計、リポートの作成といった作業をタブレットで実施。入力データが指定した形式や条件に合致しているかを自動的に検証し、誤りを知らせたり正しい作業を指示したりする機能も盛り込んだ。データはクラウド上に集約するため、管理者は多数の拠点の作業状況を容易に把握できる。

カミナシを使った点検作業の様子
カミナシを使った点検作業の様子
(出所:カミナシ)
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 導入プロジェクトはセブン―イレブン・ジャパンとカミナシ、取引先工場を運営するメーカー各社が加盟する日本デリカフーズ協同組合(NDF)が共同で進めた。NDFは工場の衛生・品質管理の向上を目的とする団体で、食品安全マネジメント規格(JFS規格)取得の推進や独自の安全基準に基づく品質管理のほか、食材の共同購入や商品開発に共同で取り組む。セブン―イレブンがNDFを通じてメーカー各社にカミナシを品質管理のツールとして推奨。各メーカーがカミナシとそれぞれ契約して導入した。

導入プロジェクトの枠組み
導入プロジェクトの枠組み
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 活用例の1つが製造機械の点検作業だ。機械の稼働前後に実施する「始終業点検」を設定したスケジュールと内容に基づいて実施し、結果をアプリに入力する。紙を使った従来の手作業に比べて記録漏れを予防できているほか、点検すべき項目が漏れていた場合は画面上で警告する。

 現場の点検担当者だけでなく、工場管理者の作業も効率化できた。クラウド上に集約した入力データは集計したり一覧にしたりできるため、従来のように工場各所で紙の帳票を回収する手間が省けた。