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農機の自動運転による効率化の取り組みが加速している。写真は、北海道大学ビークルロボティクス研究室の「果樹園用ロボットビークル」(写真:北海道大学)
農機の自動運転による効率化の取り組みが加速している。写真は、北海道大学ビークルロボティクス研究室の「果樹園用ロボットビークル」(写真:北海道大学)
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 農業における労働力不足を補うために、トラクターなど車両系農業機械の自動運転化が進む。既に1人で2台の操縦が可能になった。今後は、遠隔監視で1人が数台の農機を管理できるようになる見込みだ。収穫の現場では、人件費半減を目標に、ロボットを活用する動きが出てきている。

日本は農機の自動運転先進国

 自動車の自動運転では、海外勢に遅れている印象の日本。ところが、自動運転可能な農機では日本勢が先行している。

 日本では農林水産省が「農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン」を策定している。ロボティクス技術によって自動的に走行や作業を行う車両系の農業機械(ロボット農機)の安全性確保を目的に、安全性確保の原則や関係者の役割などの指針を示したものである。

 農水省はガイドラインを2017年に策定してから、改定を重ねつつ「レベル1」と「レベル2」の自動化に対応してきた。レベル2に関しては、最初にトラクターから対応し、農機の種類を増やしていった。2023年3月にはコンバインのレベル2に対応した。

 レベル1では、人が農機に搭乗しながら、直進走行といったハンドル操作の一部を自動化する。それ以外の部分の操作は人が担う。人手は減らないが、運転操作の疲労軽減につながる。スキルや経験によらずに正確に運転できるので、農作業の効率向上が見込める。

 レベル2では、圃場や圃場周辺からの有人監視下であれば、無人状態のまま自動で走行できる。使用者が別の農機を操作しながら、そばにいる無人機を監視すれば、1人で2台の農機を協調させて動かせる。単純計算で2倍の仕事量をこなせる。

 メーカーもガイドライン策定に合わせて、製品を展開してきた。クボタや井関農機、ヤンマーアグリ(岡山市)といった国内大手は現在、レベル2までの農機を数年前から製品化済みだ。海外に比べて農機の自動化に関しては「日本が進んでいる状況」(クボタ機械研究開発第六部長の仲島鉄弥氏)だといえる。同社は2017年にレベル2対応のトラクターを試験販売し、2019年から正式に製品化した。

クボタはトラクターの自動運転レベル2に対応済みだ(写真:クボタ)
クボタはトラクターの自動運転レベル2に対応済みだ(写真:クボタ)
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