「ChatGPT」などの生成系AI(人工知能)を業務に活用する企業が増えている。GMOインターネットグループでホスティング事業などを手掛けるGMOペパボは、全社的にChatGPTをはじめとする生成系AIの活用を進めている。
GMOペパボは2023年2月28日、ChatGPTのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を活用したチャット機能「教えてAIロリポおじさん」をリリース。同年3月には、3つEC(電子商取引)関連サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ」「minne byGMOペパボ」「SUZURI byGMOペパボ」にもChatGPTを活用した新機能を提供し、さらに同年4月にも2つのサービスにChatGPTの活用を広げている。
ChatGPTなどの生成系AIを先行導入した企業は、どのように活用に踏み切ったのか。また生成系AIを活用する際の課題は何か。GMOペパボの事例を基に見ていこう。
インターネット初期のような盛り上がりを感じる
GMOペパボは以前から生成系AIの研究に取り組んでいた。しかしGMOペパボの栗林健太郎取締役最高技術責任者(CTO)は「当時はあくまで研究レベルで、具体的なサービスへの組み込みは実現していなかった」と打ち明ける。この状況が一変したのは22年半ば。きっかけは「Stable Diffusion」や「Midjourney」といった生成系AIの登場だ。世界的に生成系AIを活用した開発事例が多く紹介され、「研究としてではなく、現場も生成系AIを自社サービスに活用できないかと取り組みを始めた」という。
22年11月には、ChatGPTがリリースされた。社内では技術者だけでなく、経営者や広報担当者もChatGPTを活用して文書の作成などを実施していたという。GMOペパボにはコンピューターに詳しい社員が多いが、技術者だけでなく広く活用が進んでいることに「インターネットの黎明(れいめい)期やスマートフォンの登場当時のような盛り上がりが感じられた」(栗林取締役)。
さらに栗林取締役が注目しているのは「他のシステムの情報を活用できることだ」と話す。ChatGPT以降でLLM(大規模言語モデル)と他のシステムをつなぐアーキテクチャーが一般化してきた。これにより他のシステムの情報を手軽に利用できるようになり、限定的だった使い方が変わってきたという。
その1つが「LangChain(ラングチェーン)」「LlamaIndex(ラマインデックス)」などのライブラリー(エージェント)の登場だ。例えばChatGPTの学習済みデータは2021年9月までである。そのため「今日の天気は」というように最新情報を問われても正確な答えを返せない。しかしライブラリーを活用すれば、Google検索の結果や他のアプリケーション、独自データなどを参照して表示できるようになる。「23年に入ってライブラリーが充実してきたので、ChatGPTなどのLLMを用いて構築できるシステムの幅が広がった」(栗林取締役)という。
またChatGPTでは外部システムを参照するようなプラグインの開発も進んでいる。こうしたプラグインを利用すれば「今日はどこで夕飯を食べればいいの」といった問いかけがあった際、外部の飲食店予約サイトなどを参照して受け答えが可能になるという。