「3%しか目指せないのであれば、撤退などを考えた方がいいのではないか」(証券アナリスト)。
富士通は2023年5月24日、2026年3月期を最終年度とする3カ年の新中期経営計画を発表した。同日開かれた説明会では、富士通の「鬼門」と言える海外事業の立て直し策が具体的に示されなかったことについて、アナリストから厳しい質問が相次いだ。
SI・サービス事業の営業利益率を15%に
富士通は、新中計の最終年度となる2026年3月期に、売上収益(売上高に相当)を2023年3月期比13.1%増の4兆2000億円、調整後営業利益を同55.9%増の5000億円とする目標を発表した。
時田隆仁社長は前中計で手掛けてきた改革の成果を口にした上で、「新たな中期経営計画でもさらに変革を進め、結果を出す準備は整っている」と自信をのぞかせた。
新中計では事業のセグメント区分を一部変更した上で、2026年3月期に主力のSI(システムインテグレーション)・サービス事業である「サービスソリューション」の調整後営業利益率を15%にする目標を掲げた。
具体的には2023年3月期まで「テクノロジーソリューション」として公表していた主力事業を、SI・サービスのサービスソリューションと、ハードウエアの販売・保守の「ハードウェアソリューション」に分けるセグメント変更を実施。サービスソリューションを今後の成長事業と位置付け、同セグメントの売上収益を2026年3月期に2023年3月期比21.0%増の2兆4000億円とする方針だ。
けん引するのが、時田社長の肝いりで推し進める「Fujitsu Uvance(ユーバンス、以下Uvance)」だ。Uvanceは2021年10月に富士通が発表したもので、「サステナブル(持続可能)な世界の実現に向け、社会課題の解決にフォーカスしたビジネスを推進する全社の事業ブランド」(富士通広報)だ。
同社は2023年3月期に2000億円だったUvanceの売上収益を2026年3月期に3.5倍の7000億円に拡大する計画。さらにサービスソリューションにおけるUvanceの売上構成比を2023年3月期の10%から2026年3月期に30%に引き上げる方針だ。時田社長は「Fujitsu Uvanceを成長のドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指す」と力を込める。
一方で、その中身が見えづらい状況を疑問視する声は少なくない。ある外資系証券アナリストは「富士通が売上収益のドライバーとして掲げたUvanceは、現時点では言葉の定義が理解しづらく、高い増収目標に対する達成確度を高めるには不十分な説明にとどまっている。詳細は今後のIR Dayで確認したいが、株式市場のUvanceへの理解を深めて浸透を図るにはより丁寧な説明が必要ではないか」と指摘する。