全1610文字
PR

外観を変えた枕型ガラス・ファサード

 既存建築のシンプルな外観に対しては、上層部に「ピロー・ウィンドー」と呼ばれる、枕型のガラス・ファサードが嵌め込められ、室内に自然光を導入している。開口部の膨らみは、まるで建物が呼吸しているかのようなデザインだ。アラップのファサード・エンジニアが構造上必要な制約を設定したパラメトリック・モデルを作成し、設計者が好きなように形状操作できるよう設計を行った。

枕型のガラス・ファサードが挿入された建物外観。窓は全5サイズあり、最大約5m角。遠方からも見えるよう、灯台を意識してデザインした(写真:© Arup)
枕型のガラス・ファサードが挿入された建物外観。窓は全5サイズあり、最大約5m角。遠方からも見えるよう、灯台を意識してデザインした(写真:© Arup)
[画像のクリックで拡大表示]

 この多面体ガラス・ファサードは、コストや現地調達性も考慮したうえで、フレームをできるだけ小さくしている。三角形の板ガラスには銀2層タイプのLow-Eガラスを採用し、熱取得を抑えた。平滑なファサードに比べ日射の反射面が増えるため、ピーク時のエネルギー負荷を減らしつつ、最大限の眺望と採光をもたらしている。

彫刻庭園となっている屋上テラス。アトリウム上部の歩行可能なスカイライトには、滑り止めも兼ねて、この美術館のための特注アートワークが施されている(写真:© Arup)
彫刻庭園となっている屋上テラス。アトリウム上部の歩行可能なスカイライトには、滑り止めも兼ねて、この美術館のための特注アートワークが施されている(写真:© Arup)
[画像のクリックで拡大表示]

コンクリート蓄熱で安定した温熱環境を実現

 国際美術機関から作品をレンタルするためには、ギャラリー空間における正確な環境管理が必須となる。機械設備設計には、消費電力と地元インフラに対する負担を削減するために、高効率であることが求められた。

 展示室を包み込む外部ファサードは、新たに構築したコンクリートによって蓄熱を行い、強い南東風を含む外部環境から、空間や作品を保護している。また、内部はスラブの露出したコンクリートの大きな蓄熱容量が、室内の安定した温熱環境に寄与している。展示室の空調システムは、上げ床によって各室の周囲から低速で噴き出す設計だ。

ギャラリー内観。隣接する港の海水を利用した地域冷暖房システムを採用している。設定温度は、加熱・冷却サイクルの効率が最大になるよう最適化した(写真:© Arup)
ギャラリー内観。隣接する港の海水を利用した地域冷暖房システムを採用している。設定温度は、加熱・冷却サイクルの効率が最大になるよう最適化した(写真:© Arup)
[画像のクリックで拡大表示]