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横断的な管理ができる上位システム「Neuron」

 デジタルツインを実現するには、膨大な数のセンサーや処理が必要となるため、現時点では非常に難易度が高い。しかし、強調しておきたいのは、各設備のデータを統合して分析し、連携させる統合プラットフォームの重要性だ。

 現在、多くの建物ではビルマネジメントシステムや、エレベーター、セキュリティー、防災、IoTセンサーといった各システムがバラバラに機能している。理想的なデジタルツインを実現するならば、それらからデータを収集し、分野横断的に解析をかけ、それぞれのシステムに指示を与えられる上位の管理システムが必要不可欠だ。

Neuronは建物内のビルマネジメントシステム、設備、IoTセンサー、監視カメラなどのセキュリティーシステム、BIMをまとめて管理できるプラットフォームとして開発した(資料:Arup)
Neuronは建物内のビルマネジメントシステム、設備、IoTセンサー、監視カメラなどのセキュリティーシステム、BIMをまとめて管理できるプラットフォームとして開発した(資料:Arup)
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 そこで、アラップはNeuronと呼ぶ統合プラットフォームを開発した。Neuronはこれまで別々に管理されてきた建物内のシステムを束ね、さらにそれらをファシリティーマネジメント機能と統合することで、建物全体を集中管理する頭脳として機能する。また、Neuronはクラウド上で動作するため、複数棟の一括管理や、遠隔での機能追加・向上が可能だ。

 既に香港や中国本土の数件の建物で運用されており、その1例が「One Taikoo Place」だ。香港島の中心地に位置し、41階建て、延べ面積9万5000m2の規模を持つ。香港大手デベロッパーであるSwire社が開発した新築複合施設である。アラップは構造設計などの分野で携わり、デジタルコンサルティングの一環としてNeuronを導入した。

香港に立つオフィスビル「One Taikoo Place」。 屋上緑化を含む6000m2を超える緑化エリアを持ち、超高層ビルに囲まれたビジネス街で働く人々がリフレッシュできるよう、自然を身近に感じられる環境を提供している。米国発祥の環境認証「LEED Platinum」に加え、米国発祥の健康建築性能評価「WELL Platinum」のダブル取得を達成した(写真:Marcel Lam Photography)
香港に立つオフィスビル「One Taikoo Place」。 屋上緑化を含む6000m2を超える緑化エリアを持ち、超高層ビルに囲まれたビジネス街で働く人々がリフレッシュできるよう、自然を身近に感じられる環境を提供している。米国発祥の環境認証「LEED Platinum」に加え、米国発祥の健康建築性能評価「WELL Platinum」のダブル取得を達成した(写真:Marcel Lam Photography)
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 本建物では、Neuron上で設備の運転履歴、監視カメラの画像解析から取得した施設内の人数データ、天気予報などを基に24時間後、あるいは30分後に必要とする空調負荷を、機械学習を用いて予測する。そして、エネルギー消費量が最も小さくなるように、チラーや冷却塔といった熱源設備の個別運転スケジュールを作成し、空調運用オペレーターに提案する機能を持つ。

Neuronシステムの画面例。設備稼働状況や空調エネルギー、上水消費量、電力消費量などのリアルタイムデータや、電力消費の内訳の日別推移、テナント別の電力消費量といったデータを表示している(資料:Arup)
Neuronシステムの画面例。設備稼働状況や空調エネルギー、上水消費量、電力消費量などのリアルタイムデータや、電力消費の内訳の日別推移、テナント別の電力消費量といったデータを表示している(資料:Arup)
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Neuronシステムの画面例。ニューラルネットワークを使って将来の空調負荷を予想し、それに応じた最適な運転スケジュールを画面上で提案してくれる(資料:Arup)
Neuronシステムの画面例。ニューラルネットワークを使って将来の空調負荷を予想し、それに応じた最適な運転スケジュールを画面上で提案してくれる(資料:Arup)
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 Neuronによる運用補助機能を用いることで、手動オペレーションと比較して空調エネルギーを約15%削減した。さらに興味深いことに、脳の神経機能を模倣したAIによる情報処理方法「Neural Network(ニューラルネットワーク)」による学習を行っているため、竣工後であっても時間がたつにつれて設備機器の運用が上達し、省エネ性能が向上する。