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機器の故障や清掃時期を自動推定してお知らせ

 Neuronで使えるファシリティーマネジメント機能もいくつか紹介したい。本建物では竣工時に作成したBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)上に設備機器のデータや仕様書、設計図などの情報を統合している。

Neuronシステムの画面例。BIMモデルを見ながら設備をクリックすると、現在の稼働状況、リアルタイムの機器データ、仕様書・説明書が表示される。機器の制御も可能だ(資料:Arup)
Neuronシステムの画面例。BIMモデルを見ながら設備をクリックすると、現在の稼働状況、リアルタイムの機器データ、仕様書・説明書が表示される。機器の制御も可能だ(資料:Arup)
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 空調機器やエレベーターのセンサーデータを基にその機器の故障時期を推定した際、さらには、IoTセンサーを用いてトイレの清掃が必要なタイミングを検知した際には、作業員のスケジュール上に機器の交換時期や清掃時期を自動的にリストアップする機能を備えている。不要な定期点検作業をなくし、必要な時に点検・清掃を行うシステムに変えていくことで、テナントの満足度を維持しながらも建物の運営効率を上げられる。

 空調エネルギーの削減や、ファシリティーマネジメントの効率化達成といったNeuron導入の実績が認められ、Swire社が新規開発している建物でもNeuronの導入が進んでいる。その建物はOne Taikoo Placeと同様の規模、似たプロポーションであることから、Neuronに蓄積した各設備稼働データを設計に生かすことができる。過剰設計を防ぎ、省エネで、よりテナント満足度の高いオペレーションを目指していく。

 また、アラップではソフトウェア・アップデートの要領でNeuronの機能を随時追加している。最近では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受けて、感染症対策の機能を追加した。

 導入例としては、建物の入り口にサーモカメラを設置し、体温が高い人を検出した際には警告音を出すようにした。その後、発熱者は専門員による詳細なチェックを受ける。今後、これをセキュリティーシステムと連携すれば、発熱者の入館の自動制限、追跡も可能になるだろう。

 このように、Neuronのような統合プラットフォームを用意しておけば、建物の竣工後であっても機能追加が容易になり、社会の変化に合わせて持続的に施設機能を更新できる。建物が持つ様々な機能の自動化や、省エネ性能の最大化も可能だ。デジタルツインの実現が進む世界では、設計者や事業者、運用者などが、「何を解決したいのか」明確な意識を持つことで、建物の可能性をいくらでも広げられるようになる。

(資料:Arup)

プロジェクト概要

  • 所在地:香港
  • 延べ面積:9万4810m2
  • 発注者:Swire Properties Limited
  • 意匠設計者:Wong & Ouyang(HK)
  • 構造設計、環境設計、ファサードエンジニアリング、火災安全設計 :Arup
  • 竣工時期:2018年9月
大江晴天(おおえ・はるたか)
大江晴天(おおえ・はるたか) アラップ東京事務所/環境設備エンジニア。東京理科大学大学院工学研究科機械工学専攻修了。2017年にアラップ東京事務所に入社。商業施設、公共施設、オフィス、フィットアウトなど様々な案件の設備設計に携わる。主な担当プロジェクトはSTARBUCKS RESERVE ROASTERY TOKYO、松原市民松原図書館など。建築設備士。
菊地 雪代(きくち・ゆきよ)/執筆協力
アラップ東京事務所、アソシエイト/シニア・プロジェクト・マネージャー。2011年9月よりケンプラッツ、日経アーキテクチュア・ウェブ、日経クロステックにて、アラップが関与したプロジェクト紹介の記事を連載。