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コロナ禍で準備支援のニーズ高まる

 ヒースロー空港の事例を通じて、施設やシステムといった「モノ」だけでなくそこで働く「ヒト」も重要な要素となること、そして様々なシナリオを想定しておくことがリスクの低減につながることが分かった。ここからは、新型コロナウイルスの感染拡大からオフィス再開を目指す場面において、ORATがどのような役割を果たしているのかを伝えたい。

ORATの7つの重点管理項目を示すダイヤグラム。1. ORAT BLUEPRINT、2. PREPARED PEOPLE、3. FACILITIES AND SYSTEM ACTIVATION、4. PROCESS AND TRIALS、5. TRANSITION TO OPENING、6. CONNECTED LEADERSHIP、7. STAKEHOLDER TEAMWORK(資料:Arup)
ORATの7つの重点管理項目を示すダイヤグラム。1. ORAT BLUEPRINT、2. PREPARED PEOPLE、3. FACILITIES AND SYSTEM ACTIVATION、4. PROCESS AND TRIALS、5. TRANSITION TO OPENING、6. CONNECTED LEADERSHIP、7. STAKEHOLDER TEAMWORK(資料:Arup)

 新型コロナウイルスは、20年に入ると瞬く間に世界中へと拡散し、各地で甚大な被害をもたらすこととなった。企業の観点では、スタッフの安全を確保しつつ、いかにして生産性を維持するかという新たな課題が浮かび上がっている。

 アラップでは、画像解析を活用した入退館システムやソーシャルディスタンシングを踏まえた動線やデスクレイアウトの計画ツールなど、世界各地で企業のオフィス再開を支援するサービスを提供している。

 アラップが開発したAIを用いたビル管理システムNeuron。写真は、同システムを用いた入退館システムのイメージ(写真:Arup)
アラップが開発したAIを用いたビル管理システムNeuron。写真は、同システムを用いた入退館システムのイメージ(写真:Arup)
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Space Explorer from Arup España on Vimeo.

コロナ禍のオフィス再開に向け、デスクのレイアウトや動線の見直しをサポートするSpace Explorer(資料:Arup)

 しかしながら、「安全なオフィス再開」を目指すべき状態としたとき、入退館管理は要素の1つでしかなく、これを突き詰めても安全が確保されることはない。ソーシャルディスタンシングを踏まえた動線やデスクのレイアウト計画も同じである。これらに加え、清掃やオフィス内の空調など、様々な要素に対する施策が組み合わされて初めて安全が確保されるのだ。

 ORATのフレームワークを応用し、「安全なオフィス再開」に向けて考えるべき要素、起こり得るシナリオ、予想外の事態への対応といった点を複合的に検討することで、スタッフの安全を確保しつつ、生産性を維持できる。アラップの米国ロサンゼルスオフィスに所属するジェーン・ゴスレットORATチームリーダーは、オフィス再開におけるORATの有用性について次のように述べている。

 「コロナ禍からの回復は、空港の運用開始と違って『運用開始日』が1日とは限らない。しかし一つひとつ要件を定義するという点で変わりはなく、複数の運用開始日に向けた準備を行うことは企業のレジリエンス力自体を高めることにつながるだろう」

 新型コロナウイルスの感染拡大はいまだ収束のめどが立っていない。だが、様々な状況を想定し、できる限りの準備を施すことが感染拡大防止、ひいては新型コロナウイルス感染症の収束につながると信じている。

プロジェクト概要:

  • 所在地:Longford TW6, United Kingdom
  • クライアント:HEATHROW AIRPORT LTD.
  • ORAT(運用開始準備支援)、オペレーションコンセプト作成支援:Arup
  • 運用開始:2014年6月
松本 和也(まつもと・かずや)
アラップ東京事務所/プロジェクト・マネージャー
松本 和也(まつもと・かずや) 国内のゼネコンや設計事務所にて都市計画や企業不動産利活用に取り組んだ後、コンサルティングファームにてホテルブランディングに携わる。その後アラップに入社し、プロジェクト・マネージャーとして、消費財メーカーの本社地区マスタープラン作成支援やオリンピック関連プロジェクトを担当する。
菊地 雪代(きくち・ゆきよ)/執筆協力
アラップ東京事務所、アソシエイト/シニア・プロジェクト・マネージャー。2011年9月よりケンプラッツ、日経アーキテクチュア・ウェブ、日経クロステックにて、アラップが関与したプロジェクト紹介の記事を連載。