全2746文字
PR

 Cradle to Cradle(C2C、クレイドル・トゥ・クレイドル)という言葉をご存じだろうか。 “揺り籠から揺り籠まで”を意味する。この言葉は、英国がかつて掲げたスローガン、“揺り籠から墓場まで”をもじったものである。1970年代に提唱された後、2002年に米国で出版された書籍「Cradle to Cradle: Remaking the Way We Make Things」の中で、「完全循環型デザイン」として定義された。同書は、米国の建築設計者ウィリアム・マクダナー氏と、ドイツの化学者ミヒャエル・ブラウンガルト氏による共著だ。

 C2Cとは具体的にいえば、大量生産の結果、 “廃棄はやむを得ない”とする従来の考え方を根底から見直し、自然界の生命のように循環し続ける製品、仕組みづくりを提案する考え方を指す。今回は、そのコンセプトを体現した住宅「コルクハウス」について紹介する。(以上、菊地 雪代/アラップ)

 「コルクハウス」は2018年、英国ロンドン近郊のバークシャー州イートンに完成した。イートンは19世紀から続く伝統的な工場地域である。その一角に、5つに連なるとんがり屋根のコルクハウスはたたずむ。

 建築設計者のMatthew Barnett Howland(マシュー・バーネット・ハウランド)氏とDido Milne(ディド・ミルン)氏は圧延加工したコルクの断熱性や耐候性に着目し、自邸の庭にコルクブロックを使った家を建てることを構想した。そして両親のためのセカンドハウスとして計画したのが、コルクハウスだ。床などに使ったCLT(直交集成板)部材や杭(くい)基礎を除き、大部分をコルクでつくり、また設計者自身の手作業によって建設した。

コルクハウスは建築設計者のMatthew Barnett Howland(マシュー・バーネット・ハウランド)氏とDido Milne(ディド・ミルン)氏の自邸の庭に建設した(写真: Ricky Jones)
コルクハウスは建築設計者のMatthew Barnett Howland(マシュー・バーネット・ハウランド)氏とDido Milne(ディド・ミルン)氏の自邸の庭に建設した(写真: Ricky Jones)
[画像のクリックで拡大表示]
バランスよく配置した開口が開放感を生んでいる。吸音効果の高いコルク材で覆った室内は、驚くほど静かだそう(写真:Ricky Jones)
バランスよく配置した開口が開放感を生んでいる。吸音効果の高いコルク材で覆った室内は、驚くほど静かだそう(写真:Ricky Jones)
[画像のクリックで拡大表示]

 アラップはコルク造の住宅を実現するため、構造設計と火災安全設計のエンジニアとして、コルク材の配合検討から設計までをサポートした。