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 香港の西九龍地区が、アートやカルチャーを中心に据えた、新スポット「西九龍文化地区」として生まれ変わっていることをご存じだろうか。西九龍文化地区は、1990年代に埋め立てられた約40ヘクタールの土地を活用した場所だ。夜景の名所としても有名なビクトリア湾沿いに、劇場やパフォーマンススペース、美術館が並び、世界レベルの展示会や文化イベントを開催している。長さ2kmに及ぶウオーターフロントプロムナードは市民の憩いの場ともなっている。

水平方向と垂直方向の明快かつシンプルな形態が象徴的な映像美術館「M+」。巨大なスクリーンにもなるファサードは、ビクトリア湾に向いている(写真:Virgile Simon Bertrand. Courtesy of Herzog & de Meuron)
水平方向と垂直方向の明快かつシンプルな形態が象徴的な映像美術館「M+」。巨大なスクリーンにもなるファサードは、ビクトリア湾に向いている(写真:Virgile Simon Bertrand. Courtesy of Herzog & de Meuron)
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 2020年12月末、この地区の中心施設として、美術館「M+(エムプラス)」が竣工した。ビジュアル・アートやデザイン、建築、映像などの作品を収集、展示する他、20世紀から21世紀にかけて制作された香港の映像文化の収集や展示、解釈にも特化している。アジア初のグローバルな現代映像文化ミュージアムだ。

M+の解説動画 (動画:Fallout Media; Courtesy of M+)

 意匠設計は、ヘルツォーク&ド・ムーロン(H&deM)、TFPファレルズが手掛けた。延べ面積は約6万5000m2だ。

 33のギャラリーから成る1万7000m2の展示スペース、3つの映画館、メディアライブラリー、学習ハブ、リサーチセンター、ミュージアムショップ、レストラン、カフェ、メンバーズラウンジ、オフィスがあり、ビクトリア湾の壮大な景色を望む屋上庭園も併設している。ギャラリーのほとんどを低層部に配置しており、来館者は空間的に途切れることなく展示を楽しむことが可能だ。

 威風堂々としたその建物は、大きく広がる低層部と、印象的な細身のタワーという、水平方向と垂直方向の記念碑的なボリュームで構成している。H&deMが読み解いた香港の建築景観の独特なタイポロジーと、地元の都市条件に対する配慮を反映している。

 タワーは、香港の都市景観との視覚的な対話を意図している。14万枚のダークグリーンのセラミックタイルで覆われたファサードは、光や天候の変化を反射し、周辺のガラスやスチール製の高層ビルとは異なる表情を見せる。

 これらのタイルは水平なルーバー状になっており、美術館の内部空間に入り込む日差しを遮る役割を果たしている。ルーバーのくぼみにはLEDシステムを埋め込んでおり、夜になるとこのファサードが高さ65.8m、幅110mの巨大なスクリーンに変身し、香港の華やかな夜景にさらにひと花添えている。サイネージにはミュージアムに関連するコンテンツを表示し、特別に依頼された芸術作品なども展示する。

ビクトリア湾越しに対岸からM+を望む。隣にはKPFが設計した超高層ビルICC(世界貿易センター)が立つ(写真:Virgile Simon Bertrand. Courtesy of Herzog & de Meuron)
ビクトリア湾越しに対岸からM+を望む。隣にはKPFが設計した超高層ビルICC(世界貿易センター)が立つ(写真:Virgile Simon Bertrand. Courtesy of Herzog & de Meuron)
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