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 テレワークを経験するなどして、働く環境やオフィスの在り方について、これまでに無いくらい考えるようになった。オフィスはやはり必要だと思う人でも、重視するポイントやオフィス環境への期待値が変わっているのではないだろうか?

 今回は、IoT(Internet of Things)を駆使して、社員の健康に配慮した環境を整え、どの場所よりも集中でき、コミュニケーションが取りやすいといった付加価値を持つオフィスについて、環境設備エンジニアが解説する。(以上、菊地 雪代/アラップ)

 オフィス環境を設計し、構築するための重要な要素として、最新のIoT技術やシミュレーション技術が挙げられる。IoTを使えば、人々の居場所を把握、分析でき、オフィスの利便性を高められる。人々がスマートフォンから自席周辺の環境を変えることも可能だ。

 コミュニケーションや集中に適した音環境を提供することで、より快適な空間を提供する他、人々が安全で心地よいと感じ、感染症も抑えられるようなオフィス環境をシミュレーションによってつくり上げることも実現できる。これにより、オフィスの付加価値を高められるのではないだろうか。

 2020年11月に竣工した、サンスターグループの新たな日本拠点である「サンスターコミュニケーションパーク」(大阪府高槻市)は、「健康」をテーマに設計された最新のオフィスである。社員同士だけでなく、地域の人たちとの交流の場を設けるなど、様々な役割を備える。アラップは、プロジェクトマネジメントや構造設計、設備設計、照明デザインを担当。さらに、IoTを使って健康的で利便性の高いオフィスにするべく、デジタル技術の導入コンサルティングサービスも提供した。

2020年12月、大阪府高槻市に完成した「サンスターコミュニケーションパーク」の内観(写真:Arup)
2020年12月、大阪府高槻市に完成した「サンスターコミュニケーションパーク」の内観(写真:Arup)
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 サンスターコミュニケーションパークの延べ面積は約7000m2、3階建ての建物である。建物中央のトップライトからは自然光を取り入れられる。自然通風を行っており、省エネと健康に配慮した計画としている。これによりCASBEE-ウェルネスオフィス認証Sランクを取得した。

 本建物は、棟内に設置したWi-Fiアンテナを活用することで、社員の持つ社用スマートフォンの位置を追跡している。このリアルタイムの位置データを軸に、様々なサービスを提供している。

 1つ目は、申告型空調制御である。これは、「暑い」「寒い」という温冷感を社員が自分のスマートフォンから申告すると、システム側で申告結果を集計し、その日の天気や季節を考慮して各空調機の設定温度を決定、自動的に反映するシステムである。

 一般的なビルのように利用者が管理人室に電話して設定を変えてもらう必要はなく、人を介さずに温度が変わっていく。ある一部の利用者が設定温度を決定するわけでないため、より利用者全員の温冷感に即した環境を提供できる。このシステム構築やアプリのUIデザインはウフル(東京・港)と連携して開発した。

手元のスマートフォンから温冷感を申告すると、システム側で自動的に計算し、人の手を介することなく空調機の設定が変更される(資料:ウフル)
手元のスマートフォンから温冷感を申告すると、システム側で自動的に計算し、人の手を介することなく空調機の設定が変更される(資料:ウフル)
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 2つ目の機能は、社員のリアルタイムの位置検索機能である。スマートフォンを使って、同僚が建物内のどこにいるかを検索することができ、出社しているか、外勤中かどうかも判別できる。フリーアドレスデスク制に加えてテレワークの本格導入も始まり、働く場所のマネジメントの重要度が増す中で、社員がどこで働いていてもマネジメントできる体制を整えている。

 3つ目の機能は、管理者が、感染症などにかかった人の過去の行動範囲を検索できる機能である。これにより、万が一新型コロナウイルスの感染者が発生した場合でも、濃厚接触者の特定や除菌を速やかに行うことができ、より安心したオフィス利用が可能となる。

手元のスマートフォンから同僚のリアルタイムの位置を検索でき、管理者は感染症にかかった人の行動履歴を確認することができる(資料:ウフル)
手元のスマートフォンから同僚のリアルタイムの位置を検索でき、管理者は感染症にかかった人の行動履歴を確認することができる(資料:ウフル)
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 このように位置情報を利用することで、将来的に様々なサービスの提供が可能になる。例えば、データを使って利用者の密集を避けるよう促す他、環境がどのように利用されているか、どういった環境が利用者に好まれるかを分析し、改装時のプランニングに反映することもできる。より利用者にとって満足度の高いオフィス環境を生み出せる。