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 都市の「安全」または「安全でない」場所のマッピング調査が、オーストラリアの大学で行われた。街を歩いていて、ここはなんとなく危ない感じがする、と思ったことは誰にでもあるのではないだろうか?その原因を突き止めようというのだ。

 携帯アプリを活用して、6都市で若い女性を中心に行われたこの調査。結果は、「安全でない」と感じる理由として約3割の人が「照明」を挙げた。

 人々の安全性の認識と夜間照明環境とはどのような関係があるのか?単に「明るければ安全、心地よい」とは限らない、都市の照明環境。その分析結果をレポートする。(以上、菊地 雪代/アラップ)

 夜間に1人で歩いていて、不安に感じたことはないだろうか。人通りの少ない暗い夜道を避けたことは? 2016年、オーストラリアのモナシュ大学では、若い女性や少女たちを対象として、メルボルンの街中で昼夜に「安全」または「安全でない」と感じる場所を携帯アプリから地図上にマークしてもらう、クラウドソーシングを使った調査を行った。

 さらに、オーストラリア・シドニー、インド・デリー、ウガンダ・カンパラ、ペルー・リマ、スペイン・マドリードといった都市でも同様の調査を実施した。その結果はほぼ共通して、3人に1人が不安に感じる要因に「照明」を挙げたそうだ。

夏の夜遅く、メルボルン市街の地べたに座り、談笑する少女たち(写真:Arup)
夏の夜遅く、メルボルン市街の地べたに座り、談笑する少女たち(写真:Arup)
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デジタルマッピングのプラットフォーム「Free To Be」を使って集計した、メルボルン市内で安全(緑色)と安全でない(赤色)場所をマークで示す。回答が多かった場所ほど円が大きい(資料:PLAN International)
デジタルマッピングのプラットフォーム「Free To Be」を使って集計した、メルボルン市内で安全(緑色)と安全でない(赤色)場所をマークで示す。回答が多かった場所ほど円が大きい(資料:PLAN International)
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 人々の安全性の認識と夜間照明環境とはどのような関係があるのか、どういった照明要素が都市の夜間環境に影響しているかを特定できるか、照明要素の影響は定量化できるのか──。それらを探るため、アラップはモナシュ大学の「XYXラボ」と、国際的なNGO団体「プラン・インターナショナル」と協働して照明調査を行った。集計したメルボルンの実証データを基に、メルボルン市内84カ所の「ホットスポット」を洗い出した。

 ホットスポットは、地図上に「安全」「安全でない」と書き込みのあった900以上の場所の中で、その場所に対するコメント数の多さ、また照明が影響していると言及しているかによって特定している。

 18年末、4週間にわたり実施した調査では、水平面や鉛直面の照度、輝度、色温度や演色性などといった照明要素を測定。照明環境を輝度分布によって解析するためのHDR撮影も行った。HDRとは、High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略称で、露出の異なる写真を複数撮影し、合成するものだ。

 その他、道幅や視覚的な障害の有無など、各所の物理的な特徴を記録した。最終的にはそれらの記録をGISモデルにまとめ、安全・安全でないと認識されているそれぞれの照明環境の特徴を分析した。

調査時に注視した、主な照明要素と物理的特徴の一覧(資料:Arup)
調査時に注視した、主な照明要素と物理的特徴の一覧(資料:Arup)
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GISモデルにまとめた照明調査結果。将来的に歩行者の通行量や騒音量など、その他の都市設計データなどとも相関を取ることを視野に入れた(資料:Arup)