エビデンスベースの包括的デザインへの転換
人々が夜間環境をどのように感じているかといった定性的データと、都市環境の定量的データ。これらを蓄積し、同時に分析することで、目指すべき新たな都市デザイン像が見えてくる。GISモデルには、照明だけでなく、人の通行量や騒音量などのデータを足していくことで、豊かな都市体験データベースを構築し、複合的な視点を持つことができるようになる。例えば、シャッター街などの地域活性化策を考えることにも役立つだろう。
街の特定の場所を避けるかどうか、公共交通機関などを安心して利用でき、そもそも夜間に家を出る気になるか。人々の安全性への認識は、ナイトタイムエコノミー(夜間経済)といった、日没の午後6時頃から翌朝午前6時頃までの経済と文化の両面における街の活性化にも影響する。
本調査は主に若い女性たちに焦点を当てているが、同様の研究は高齢者や子供など、他の弱い立場にある人々を対象とすることもできる。利用者が普段の生活の中で感じている不安や不便といった、社会の中で必ずしも拾われるわけではない声や、その疎外された経験をデータソースとして取り込み、改善策に反映する。そうすることで、真にインクルーシブな街づくりが可能になるのではないだろうか。デジタル時代ならではの、人と環境に優しい設計手法を探っていきたいところだ。
プロジェクト概要
Perception of Safety ―Lighting Study
- 所在地:オーストラリア、メルボルン
- 協働者:Monash University XYX Lab、PLAN International
- Lighting:アラップ
アラップ東京事務所/アソシエイト、ライティング リーダー
