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エビデンスベースの包括的デザインへの転換

 人々が夜間環境をどのように感じているかといった定性的データと、都市環境の定量的データ。これらを蓄積し、同時に分析することで、目指すべき新たな都市デザイン像が見えてくる。GISモデルには、照明だけでなく、人の通行量や騒音量などのデータを足していくことで、豊かな都市体験データベースを構築し、複合的な視点を持つことができるようになる。例えば、シャッター街などの地域活性化策を考えることにも役立つだろう。

人の体験に基づく定性的データと都市環境の定量的データを考慮することで、エビデンスベースの設計を考える(資料:Arup)
人の体験に基づく定性的データと都市環境の定量的データを考慮することで、エビデンスベースの設計を考える(資料:Arup)
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 街の特定の場所を避けるかどうか、公共交通機関などを安心して利用でき、そもそも夜間に家を出る気になるか。人々の安全性への認識は、ナイトタイムエコノミー(夜間経済)といった、日没の午後6時頃から翌朝午前6時頃までの経済と文化の両面における街の活性化にも影響する。

 本調査は主に若い女性たちに焦点を当てているが、同様の研究は高齢者や子供など、他の弱い立場にある人々を対象とすることもできる。利用者が普段の生活の中で感じている不安や不便といった、社会の中で必ずしも拾われるわけではない声や、その疎外された経験をデータソースとして取り込み、改善策に反映する。そうすることで、真にインクルーシブな街づくりが可能になるのではないだろうか。デジタル時代ならではの、人と環境に優しい設計手法を探っていきたいところだ。

プロジェクト概要

Perception of Safety ―Lighting Study

  • 所在地:オーストラリア、メルボルン
  • 協働者:Monash University XYX Lab、PLAN International
  • Lighting:アラップ
井元 純子(いのもと・じゅんこ)
アラップ東京事務所/アソシエイト、ライティング リーダー
井元 純子(いのもと・じゅんこ) 横浜国立大学卒業後、前職を経て、ロンドン大学大学院(バートレット校)修了。2007年アラップ・ロンドン事務所に入社。11~17年、上海事務所のライティングリーダーを務め、15年から東京事務所に勤務。国内外に幅広いライティングデザインの実績を持ち、建築照明や昼光照明に加え、都市計画照明、スポーツ照明などのデザインおよびコンサルティング業務に携わる。
菊地 雪代(きくち・ゆきよ)/執筆協力
アラップ東京事務所、アソシエイト/シニア・プロジェクト・マネージャー。2011年9月よりケンプラッツ、日経アーキテクチュア・ウェブ、日経クロステックにて、アラップが関与したプロジェクト紹介の記事を連載。