全3496文字
PR

 昨今、日本国内では3Dプリンターで建てられたプロトタイプ住宅などの建築物が話題を呼んでいる。

 海外に目を向けると、オランダで公共の橋が3Dプリンターでつくられ、2021年に初めて設置された。首都のアムステルダム市では長さ100km以上にもなる運河が張り巡らされており、そこに架かる橋は1500もある。その中の1つが、このたび3Dプリンターでつくられた橋である。

 比較的新しい3Dプリンターの技術を公共の構造物に適用する際に、安全性や施工精度はどう担保したのか?3D出力するメリットは何か?その詳細を、構造エンジニアが紹介する。(以上、菊地 雪代/アラップ)

 2021年7月、オランダのアムステルダムを流れるアウデザイツ・アフテルバーフワル(Oudezijds Achterburgwal)運河に 3Dプリンターでつくられたユニークな「ストーフ橋(214番橋)」が設置された。ロボットアーム型の3Dプリンターの能力を思う存分に発揮した、3D自由曲面形状のステンレス鋼の橋である。デザイナーのヨーリス・ラーマン(Joris Laarman Lab)と、オランダのテクノロジースタートアップ企業MX3Dとが協力して製作。アラップは構造設計、パラメトリックデザイン、各種材料試験の評価を担当した。

オランダのアムステルダムに設置された橋。まるでCGで描いたような形状だ。橋のサイズは12.5m×6.3m(写真: Thea van den Heuvel)
オランダのアムステルダムに設置された橋。まるでCGで描いたような形状だ。橋のサイズは12.5m×6.3m(写真: Thea van den Heuvel)
[画像のクリックで拡大表示]

 新しいデジタル技術とロボット工学を組み合わせた、いわゆる、デジタルファブリケーションの建設技術を活用することによって、建築のデザインの可能性を広げると同時に、使用する材料を最小限に抑えることができる。このことは、私たちの周りの設計環境やモノづくりの環境を大きく変えるポテンシャルがありそうだ。

 この橋を製造する際、電気アーク溶接と呼ばれる溶接技術を使用した。一般的に、溶接する際には溶接棒と呼ばれる金属のワイヤに高い電圧をかけ、金属を溶かして複数のパーツを一体化する。今回はその技術を生かし、溶接用の金属を積層することで3Dの形状を構成している。

橋を俯瞰で見た様子(写真: Thea van den Heuvel)
橋を俯瞰で見た様子(写真: Thea van den Heuvel)
[画像のクリックで拡大表示]

 アーク溶接の技術には長い歴史がある。今回の橋の製作では、その溶接技術にデジタルファブリケーションを適用した大規模な3Dプリントを行うことで、斬新なデザインを可能にした。また、産業用ロボットアームと溶接機を組み合わせたことによって、設計と製造プロセスの両方を合理化し、デザイナーはより自由に設計できるようになった。

4台のロボットアームで6カ月かけて製作した(写真:Olivier de Gruijter)
4台のロボットアームで6カ月かけて製作した(写真:Olivier de Gruijter)
[画像のクリックで拡大表示]