全2430文字

 デンマークといえば、北欧デザイン、ブロック玩具のLEGO(レゴ)、環境推進国、そんなイメージを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、そんなデンマークの首都コペンハーゲンが、かつて移動には車が必須、というような環境共生とはかけ離れた都市であったことを知る人は少ないのではないだろうか。

 その車社会からの脱却を図るべく、コペンハーゲンでは地下鉄の建設が現在進行形で進められている。今回紹介するのは2019年に開通した地下鉄「シティリンゲン(Cityringen)」プロジェクトだ。コペンハーゲン事務所のエンジニアが解説する。(以上、菊地雪代/アラップ)

アラップはエンジニアリングコンサルティング会社のCOWIや、鉄道システムコンサルティング会社の SYSTRAと共に、プロジェクト全体のテクニカルアドバイザーとして設計に携わった(写真:Rasumus Hjortshoj, COAST)
アラップはエンジニアリングコンサルティング会社のCOWIや、鉄道システムコンサルティング会社の SYSTRAと共に、プロジェクト全体のテクニカルアドバイザーとして設計に携わった(写真:Rasumus Hjortshoj, COAST)
[画像のクリックで拡大表示]

 「シティリンゲン」は、地下鉄メトロライン1と2に続いてコペンハーゲン市内に建設された全長16km、全17駅を24分で結ぶ環状地下鉄路線である。アラップは本プロジェクトのコンセプトデザインと設計施工者選定のための設計概要書の作成からJVの一員として参加した。また、実施設計が開始されてからは設計監修にも携わった。

 19年にシティリンゲン線が開業したことにより、コペンハーゲンの居住者のうち約85%が鉄道駅まで徒歩10分以内でアクセスできる環境を生み出した。これは市民たちの移動手段を車から、より環境負荷の低い鉄道へと導くことに大きく貢献した。コペンハーゲンメトロは24時間、年中無休で営業しているため、夜遅くまで飲み歩くことが大好きなデンマークの人々も、帰宅手段を心配せずに安心して街に繰り出すことができる。

シティリンゲンの路線図。旧市街地などコペンハーゲンの主要な居住区をつなぐ(資料:Arup)
シティリンゲンの路線図。旧市街地などコペンハーゲンの主要な居住区をつなぐ(資料:Arup)
[画像のクリックで拡大表示]

 コペンハーゲンメトロの駅は他の主要都市にある地下鉄駅に比べてプラットホームの長さが大変短い。これは、シティリンゲンのほとんどの駅が、19世紀に建設された歴史的建築物が多く残る地域にあり、それらの建物への影響を最小限に抑えた設計が求められたからだ。

 シティリンゲンの駅の形状はLEGOブロックのようにモジュール化され、各駅は約64m×約20mの投影面積、プラットホームの長さは約45mである。プラットホームの全長が短くなることで停車できる車両数は限られるが、完全自動運転化された車両が3分から5分おきに来るため、通勤ラッシュ時でも混雑することなく乗客を輸送できる。また、駅の端から端までを見通せるため、初めてこの駅に降り立った人でも迷うことなく出口を探すことができる。

完全自動運転化された車両には運転席が無い。地下鉄ながらも開放感のある車両(写真:Rasumus Hjortshoj, COAST)
完全自動運転化された車両には運転席が無い。地下鉄ながらも開放感のある車両(写真:Rasumus Hjortshoj, COAST)
[画像のクリックで拡大表示]
駅構内に自然光を届ける天窓の周辺には、市民が集える公園も同時に計画された(写真:Rasumus Hjortshoj, COAST)
駅構内に自然光を届ける天窓の周辺には、市民が集える公園も同時に計画された(写真:Rasumus Hjortshoj, COAST)
[画像のクリックで拡大表示]