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 前回に引き続き、今回もキリンホールディングス(キリンHD)とアサヒグループホールディングス(アサヒグループHD)の話題を取り上げる(前回記事「キリンとアサヒの決算発表にあった“事業利益”の意外な正体」)。

 両社の国内酒類事業の採算性が改善しているらしい。その根拠として使われているのは売上高事業利益率である。2018年3月15日付日本経済新聞によると、2016年12月期以降の売上高事業利益率は両社とも伸びており、2018年12月期には両社とも20%を超える見通しだという。なお、ここでの「事業利益」は前回説明した通り、日本の会計基準(以下、日本基準)における営業利益に相当するものだ。また、売上高に酒税は含まれていない。

 果たして、キリンHDとアサヒグループHDの採算性は本当に改善しているのだろうか。今回もポイントになるのはIFRS(国際会計基準)だ。

IFRSは売上高からリベートを控除しなければならない

 アサヒグループHDは2016年12月期から、キリンHDは2017年12月期からそれぞれIFRSを任意適用している。日本基準からIFRSへの変更は、売上高事業利益率の分母と分子の双方に少なからず影響を与える。まず、分母の売上高に対する影響から見ていこう。

 IFRSの売上高計上基準(IAS第18号「収益」)によれば、売上高は「受領した又は受領可能な対価の公正価値により測定しなければならない」とされており、公正価値は「値引き及び割戻しの額を考慮後」とされている。すなわち、日本基準では通常「販売費及び一般管理費」に「販売奨励費」などの科目で計上されるリベート等を、IFRSにおいては売上高から控除しなければならない。IFRSの売上高計上基準は2018年1月1日からIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」という新たな基準に変更されたが、この点に関する基本的な考え方は変わらない。

 ビール会社の場合、リベートの多寡は店頭や飲食店でどれだけ自社製品を扱ってもらえるかを大きく左右する。IFRSが売上高に与える影響は他にもあるが、ビール会社にとってはこれが最も大きな要因となっている。

 IFRS採用が国内酒類事業の売上高に与えた影響額は不明だが、連結ベースの売上高全体に与える影響額は各社の開示情報から読み取ることができる。例えばアサヒグループHDの場合、2016年12月期の連結売上高はIFRSの適用により1834億円減少して1兆7069億円になっている(アサヒグループHDの統合報告書:PDF)。IFRSの採用により9.7%減少したことになる。キリンHDの場合、IFRS適用により2017年12月期の連結売上高は1兆9708億円から1兆8637億円に5.4%減少している(キリンHDの2017年12月期決算説明会資料:PDF)。

 1%の増減にしのぎを削っている売上高利益率において、その分母となる売上高が9%も変わってしまったら、計算結果が全く変わってしまうことは容易に想像つくだろう。

 次に、IFRSの適用が利益にもたらす影響を見ていこう。両社の「事業利益」は従来から慣れ親しんでいる日本基準の営業利益と同じ意味なので、本稿においてはこれ以降、両社の「事業利益」を営業利益と記述していく。

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