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 2018年3月期の東芝に対して、異なる監査意見の監査報告書が2つ出された。1つは、株主総会の資料に添付された監査報告書で、こちらの監査意見は「無限定適正意見」(第179期定時株主総会招集ご通知添付書類:PDF)。もう1つは有価証券報告書に付された監査報告書で、こちらは「限定付適正意見」だ(第179期有価証券報告書:PDF)。

 監査を担当したのは、いずれもPwCあらた監査法人である。つまり、同じ監査法人が同じ会社に対して2つの異なる監査意見を出すという、一般の人には非常に分かりにくい事態となった。

脈々と続く2つの監査

 このようなことになったのは、日本においては根拠法の異なる2つの監査が以前から存在するからだ。この2つの監査は、単に根拠法が違うだけではない。監査を受ける義務のある会社の条件も異なるし、使い道や想定している読み手も異なる。

 1つは「会社法」を根拠法とする監査だ。会計業界の中では「会社法監査」と呼ばれている。これは、会社法で言うところの「大会社」(だいがいしゃ)に義務付けられている。大会社とは、資本金5億円以上または負債200億円以上の会社である。資本金5億円ということは、そこそこ大きな会社であれば該当する。上場・非上場は問わないので、非上場企業であっても大会社に該当すれば監査義務が発生する。

 この監査報告書は、株主総会招集通知に添付される「計算書類」に対するものであり、監査報告書も株主総会招集通知に添付される。計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書のことであり、いわゆる決算書だと思ってよい。この計算書類というのも会社法の用語だ。

 株主総会の招集通知に添付されることから分かるように、この監査報告書が想定している読み手は株主だ。

上場企業に監査義務が発生する金商法監査

 そして、もう1つは「金融商品取引法」を根拠法とする監査だ。会計業界の中では「金商法監査」と呼ばれており、上場企業および上場予定企業に義務付けられている。こちらは、どんなに規模の大きい会社であっても、非上場企業であれば監査を受ける義務はない。逆に、どんなに小さな企業であっても、上場企業であれば監査義務が発生する。

 この監査報告書は、有価証券報告書の中の貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、およびそれらに対する注記等に対するものだ。金融商品取引法では、これらを「財務諸表」と呼んでいる。対象範囲は若干異なるが、少なくとも貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書については、会社法の計算書類と全く同じだ。

 有価証券報告書に付されることから分かるように、こちらの監査報告書が想定している読み手は投資家全般だ。つまり、現時点の株主だけでなく、将来、株や社債に投資してくれるかもしれない世の中の不特定多数の人である。

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