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 日産自動車のカルロス・ゴーン氏が逮捕された。羽田に降り立った直後のプライベートジェットに東京地検特捜部が乗り込んでの逮捕劇は、映画のワンシーンのような衝撃的な映像だった。

 しかし、そのようなドラマチックな逮捕劇には違和感を覚える。それ以前に取り得る方法があったし、取るべきでもあったからだ。それをやらなかった取締役たちの責任は、ゴーン氏と同等以上に問われるべきではないかと思うのだ。

ゴーン氏の不正行為は3つ

 日産の発表によれば、ゴーン氏が働いたとされる不正行為は、(1)役員報酬の過少記載、(2)投資資金の私的な支出、(3)経費の不正支出の3点だ。

 (1)については、有価証券報告書に記載義務のある役員報酬額を少なく記載した疑いだ。報酬1億円以上の役員の個人名を開示することは2010年3月期から義務化されたが、ゴーン氏はその直後の2011年から過少記載を始めたようだ。過少記載の総額はその後の5年間で約50億円と言われている。

 その内訳のほとんどは、ストックアプリシエーション権(SAR)と呼ばれる株価連動型インセンティブの約40億円との報道もある。SARとは、あらかじめ決めた価格を株価が上回った場合に、その差額に応じて現金で支払われる報酬だ。ただし、SARの40億円は過少記載の50億円とは別との報道もあり、全容はまだよく分からない。

 (2)は、世界各地に高級住宅を購入させ、無償で提供を受けていた疑いだ。当初は、ゴーン氏が生まれ育ったブラジル・リオデジャネイロ、幼少期を過ごしたレバノン・ベイルート、ルノー本社のあるフランス・パリなどで購入したと報道されていたが、その後、ニューヨークや東京にも同様の住宅があったと報道されている。

 いずれも一等地の高級物件で、総額は約20億円に上るようだ。しかも、オランダにベンチャー投資名目で設立した子会社から、タックスヘイブン(租税回避地)として知られる英バージン諸島に設立した孫会社に資金の一部を移動した上で、住宅の購入に充てていたとされる。

 (3)は、ゴーン氏の家族旅行の費用数千万円を会社に負担させていた疑いである。さらに、ブラジルに住む姉とアドバイザー業務の契約を結び、毎年約10万米ドル(1000万円超)の報酬を支払っていたとも言われている。実際のところ、アドバイザー業務の実態はないようだ。この支払いは2002年から始まっていたとされるが、それは日産がV字回復を果たし、ゴーン氏が当時の小泉総理から内閣総理大臣表彰を受けた年である。

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