スマートフォンが世に出て早くも20年。その後継である“ポストスマートフォン”を探求するモバイル業界は、本命候補の1つとしてスマートグラスを挙げてきた。しかし、価格やデザインなど複数の課題が普及への障壁になっていた。
今回、その障壁をクリアしつつある中国製のAR(Augmented Reality)グラス「Nreal Light」を紹介する。Nreal Lightは中国Nreal(エンリアル)が開発し、2020年に発売したARグラスである。単体では動作せず、スマートフォンに接続して使用するタイプだ。
本製品がクリアした障壁は、まず価格である。本製品は600米ドルで、日本ではauオンラインショップにて6万9799円(税込み)で購入できる。米Microsoft(マイクロソフト)の「HoloLens 2」など、これまでのARデバイス製品の価格は数十万円の設定が多く、簡単に手が届く商品ではなかった。次にデザインである。外観は少々分厚いサングラス程度になり、装着して外を歩いても周囲から浮かないようになった。
5枚の基板をメガネに詰め込む
搭載する主要部品は、基板が計5枚あるものの、ディスプレーやモーションセンサーなど、スマートフォンなどに比べるとわずかである。今やモバイル機器の標準装備となっている無線LANやBluetoothも搭載していない。ツル部分には、両耳に当たる部分にスピーカーが1つずつ搭載されている。
メイン基板はレンズ上部、装着時に額に当たる付近に搭載されている。空間認識と自己位置推定を行うためのカメラ画像処理や、ディスプレー表示のためのICはあるものの、メインの計算処理などを行うアプリケーションプロセッサーなどは搭載しておらず、接続するスマートフォンがその役割を担う。
メイン基板A面中央には伊仏合弁STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のマイクロコントローラー「STM32F413G6」を搭載。A面右にある大きなICはメーカー不明のUSBドライバーIC「0V00580-B21G-1C」を搭載する。B面にはディスプレー接続用のコネクターが2つある。
左耳用ツルに内蔵された基板のA面には中国Lontium SemiconductorのType-C/DP1.2 to Quad-port LVDSトランスミッター「LT7211B」を搭載。B面には、メイン基板を接続するためのコネクターがある。
このコネクターは、一昔前の“ガラケー”でディスプレー接続用に使われていたのと同じものだ。左耳用ツルの基板にはスマートフォンと接続するためのケーブルが取り付けられており、スマートフォンから映像信号をメイン基板に伝送する役割を担うとみられる。
右耳用ツルに内蔵された基板は、A面に台湾Realtek Semiconductor(リアルテック・セミコンダクター)のオーディオ処理IC「ALC5684」と「ALC5672」を搭載する。B面にはボリュームスイッチが搭載されていた。
残り2枚の基板はセンサー基板である。1つは、近接センサーを搭載した基板で、メインフレームの額側に配置され、ARグラスの着脱を認識してディスプレーのオンオフを行う。
もう1枚は、加速度・ジャイロを計測するモーションセンサーを搭載したIMUセンサー基板で、メインフレームの外側に配置され、ARグラスの傾きや動きを検出する。