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世界を驚かせた「透明フィルム」の誕生

CNFは多彩な性能を持つことでも有名です。

仙波氏:その通りです。軽量で強度が高い、熱変形が小さい、表面積が大きい、透明度が高い、チキソ性がある、ガスバリア(気体の遮断)性を持つなど、さまざまな性能を備えています。

 面白いのは、直径がmm単位のものと比べてnmと桁違いに小さくなると、全く異なる性能が発現することです。例えば、CNF強化樹脂の場合、nmオーダーのCNFを樹脂の中に混ぜることで、樹脂とCNF繊維の界面(表面積)が大きくなります。いわゆる、ナノコンポジット効果です。添加するCNFの量が比較的少なくても、性能が発現する傾向があります。

 CNF強化樹脂の発泡体を造りたい場合、界面から細かい泡が無数に出てきて緻密で均質な気泡を含む発泡体を造ることが可能です。他にもいろいろな機能が発見されており、未発見の機能もまだまだあるはずです。ですから、面白い研究材料でもあります。

CNFがブームになったきっかけは何ですか。

仙波氏:2人の立役者がいます。1人は、東京大学教授の磯貝明氏です。約3nmとシングル単位の極めて細いCNFの単離に世界で初めて成功しました。以降、機能性を重視したCNFの研究が活発になりました。

 もう1人は、京都大学教授の矢野浩之氏です。樹脂を使った構造材の研究に力を入れており、CNFを補強材に使った透明フィルムを世界で初めて作成しました。具体的には、CNFとフェノール樹脂を複合化したものです。もちろん、当時、セルロースの研究者はCNFについて知っていました。しかし、活用の仕方が分からなかった。そこに、矢野先生が試験設備を使って透明フィルムを実際に作って論文を発表しました。すると、「こんなことができるのか?!」「木が透明になるんだ?!」と世界中の研究者が驚いたのです。例えば、有機ELなどのディスプレーの基板に使えるのではないかなど、実用化のイメージがしやすくなりました。その意味では、矢野先生が世界的なブームの火付け役を担ったと言えると思います。