全5465文字
PR

課題はデータベースがないこと

最後に、MIを使いこなす上で最も苦労する点を教えてください。

西野氏:データを集めることです。化学メーカーなのでデータ自体はあります。ところが、各研究開発グループが自分たちの使いやすい形で持っている。いわゆる、マシンリーダブルな形で持っていないので、そのフォーマットに変えるととてもコストがかかるのです。

住友化学デジタル革新部R&Dデータ科学チームチームリーダの西野信也氏
住友化学デジタル革新部R&Dデータ科学チームチームリーダの西野信也氏
(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

金子氏:マシンリーダブルとは、機械学習にかけられるという意味。すなわち、機械学習に使えるフォーマットに変換するということです。例えば、実験データには「条件は材料Aを0.5g、Bを1.0g入れた」と日本語のテキストで書いてあるとします。これは人間は読めますが、機械学習では整理しないと読めません。この整理を全データで行わなければならないのです。

西野氏:しかも、各研究開発グループで開発するターゲットが全く異なります。そのため、用意されるフォーマットは全然違うものになります。これらを全部まとめて全社で使える形にするには、非常にコストがかかります。こうした背景もあって、材料系のデータベースはそろわないのです。これを全社的にデータに対するリテラシーを上げつつ、データを登録しやすいインフラ整備を進めることがMIを活用する大きな課題となります。

木全 修一(きまた しゅういち)
住友化学 技術・研究企画部 主席部員(現:内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 上席政策調査員)
木全 修一(きまた しゅういち) 2001年3月、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻博士課程修了。同年4月、住友化学株式会社入社。石油化学品研究所配属(ポリオレフィン材料の開発に従事)。2004~6年、カリフォルニア工科大学へ留学。2007~16年。石油化学部門にて、樹脂製品開発の他、事業・研究企画に従事。2017~2020年、技術・研究企画部にて、コーポレート部門の研究企画に従事。2020年5月より内閣府へ出向。
金子 正吾(かねこ しょうご)
住友化学 デジタル革新部 部長
金子 正吾(かねこ しょうご) 2003年、住友化学入社。大学専攻は化学工学、博士(工学)。入社以来、13年に渡りプロセスエンジニアとして製造技術、プロセス開発に従事。2016年より3年間、本社生産技術部にて工場生産部門におけるデジタル革新(スマートファクトリー)を企画推進。2019年より現職。
西野 信也(にしの しんや) 氏
住友化学 デジタル革新部 R&Dデータ科学チーム チームリーダ
西野 信也(にしの しんや) 氏 アカデミアでの理論・計算科学研究、材料メーカーでの応用研究開発、IT企業でのソリューションサービスを遍歴した後に、文科省卓越研究員として2016年に住友化学入社。先端材料開発研究所にてマテリアルズ・インフォマティクスによる材料開発に従事。2019年より現職にてマテリアルズ・インフォマティクスの全社展開を推進。