全2894文字

クルマの設計の中で、熱マネジメントの在り方はどう変化していますか。

デンソー 電子PFハードウェア開発部の神谷有弘氏
デンソー 電子PFハードウェア開発部の神谷有弘氏

神谷氏:自動車の電動化の進行で大きく変わってきています。

 クルマは現在、低燃費化に合わせて車体の軽量化が進んでいます。そのために車載電子機器の小型・軽量化が以前にも増して求められるようになりました。ところが車載電子機器を小型化すると表面積が小さくなります。表面積が小さくなると、自己発熱する1つひとつの電子部品の熱密度が高まると同時に、限られた空間に電子部品が数多く密集するので周囲の温度が上がって全体の熱密度も高まります。

 今後、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの電動化が進み、自動運転機能が搭載されるようになれば、搭載する車載電子機器の数が間違いなく増えます。こうした流れの中で、回路基板の熱伝導率を高めるなど効率よく熱を逃がす放熱設計はより重要になります。

 一方で「耐熱設計」の必要性も高まってきました。つまり、「耐熱性の異なる部品間をどのように離すか、どのように熱的に絶縁するか」という設計です。

 EVやHEVなどが搭載しているモーターはインバーターが必須です。このインバーターの中のパワーデバイス(電力用半導体素子)に、250°Cといった高温でも動作するシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのパワーデバイスが使われ始めました。

 パワーデバイスが使われる回路には必ず、それを動かす「ゲート駆動回路」があります。ゲート駆動回路はシリコンのロジックICなどで構成されています。250°Cで動作するパワーデバイスの横に、150°C以上の高温下での動作が保証されていないシリコンのロジックICを配置していいわけがありません。距離を離して配置するか、熱的に絶縁した設計をするといった考え方が必要になってきます。

 「機電一体化」の動きも、耐熱設計の重要度を増しています。モーターなどのアクチュエーター系機器とインバーターなどの制御回路とを一体にする動きです。一体にすれば、両者をつなぐ高圧ケーブルを短くできます。600A(アンペア)もの高電流が流れて発熱する高圧ケーブルは高価です。短くなればコスト削減はもちろん、熱環境を改善できるし、軽量化も図れます。一方で高温を発するモーターに近接させる制御回路には、高温に耐えられるデバイスで動く部品を採用する考え方も出てくるわけです。