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マイクロプラスチックは生態系に悪影響

プラスチックは分解されないまま長期間残ると、どのような問題を起こすのですか。

小松氏:最近、特に問題視されているのが「海洋プラスチック問題」です。海に廃棄されたり、川から海へ流れ着いたりしたプラスチックが、分解されずに海中で極小サイズのプラスチックの粒である「マイクロプラスチック」になります。これが生態系に致命的な悪影響を与えると懸念されているのです。

 世界中で大量のプラスチックが海に流出しているのは事実です。欧州のプラスチック問題を調査・研究している団体によると、全世界で生産されているプラスチックは約2億8000万t/年。このうち、7.1%に当たる約2000万tが海洋に流出していると考えられています。

 これらのプラスチックは海に漂っているうちに、直径100μm、あるいは1μmなど極めて小さいサイズになって残存します。この極小サイズのマイクロプラスチックが、生態系に致命的な悪影響を与えると懸念され始めました。発がん性物質などを吸着してマグロやカツオといった大型回遊魚類の体内に蓄積され、食物連鎖で人間の体内に入り込む危険性が指摘されています。

プラスチック自体は有害なのですか。

小松氏:マイクロプラスチック自体は、プラスチックに添加されている化学物質の影響は除けば、現時点の科学では人間に大きな悪影響があるという信頼できる報告はほとんどありません。食物を経由して人体に入っても通常、そのまま排出されるからです。問題は、マイクロプラスチックが吸着する海中の有害物質です。

 場所によって異なりますが、海水中には発がん性物質として知られる「ポリ塩化ビフェニル」(PCB)や人体に有害な「有機リン化合物」などが含まれています。ただし海は非常に広いので、こうした化学物質も通常は希釈されて、ほとんど無害です。

 ところが、マイクロプラスチックに吸着されると高濃度になります。PCBを例に取ると、海中の平均濃度を1とすると、マイクロプラスチックには100万倍もの濃度で吸着されている客観的事実が世界中で明らかになっています。

 このようにマイクロプラスチックに吸着されてただでさえ高濃度になった化学物質が、魚や鳥類などに蓄積され、どんどん濃縮されていきます。最終的に、これらの有害物質が人間の体内に影響を及ぼす危険性が生じているーー。これがマイクロプラスチックの海洋汚染問題の本質です。この問題を軽減できると期待されているのが、生分解性プラスチックなのです。

生分解性プラスチックは、海中でもマイクロプラスチックにならないのですか。

小松氏:海中に10年も漂っていれば、生分解性プラスチックもマイクロプラスチック化します。この点を指摘して、「生分解性プラスチックは海洋プラスチック問題を解決しない」と否定する学識経験者もいます。しかし、この意見は的外れです。陸上で分解され、海に流れ着いたり、廃棄されたりしないようにするのが、生分解性プラスチックの存在意義だからです。

 海洋を浮遊するプラスチック廃棄物の約80%は、河川や風雨によって陸域から流出したものです。陸上でコンポスト(堆肥化装置)や土中に埋めて生分解処理すれば、海へ到達する前にマイクロプラスチックの発生を抑止できます。

 周知の通り、一般的な化石資源由来のプラスチックは焼却すれば大量のCO2を発して、地球の温暖化を促します。先述した通り、放置すれば高分子化合物のまま残ります。つまりゴミが増える一方になるわけです。プラスチックを陸上で処分するには、生分解性プラスチックの採用と普及が、現時点で考え得る現実的な最善策でしょう。

 プラスチック製品や包装のポイ捨てをしないように消費者への啓蒙活動も並行して行い、分別マークの工夫やコンポストの普及も検討が求められます。

生分解性プラスチックの普及は、カーボンニュートラルにも効果があるのでしょうか。

小松氏:あります。プラスチック燃焼時のCO2の排出量は全体の2%程度ではないかといわれています。火力発電所や製鉄所など、化石資源を燃焼する施設の排出量に比べると小さいので軽視されがちです。しかし、2%とはいえ無視できません。プラスチックは一般消費者に身近な素材なので、生活の中でCO2の排出量を削減できる意味は大きいと思います。