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 自動車の電動化と自動運転の導入で、車載電子機器からのノイズが増える。誤作動などの原因となるノイズ対策のため、EMC(電磁両立性)に関する知識は不可欠だ――。「日経クロステック ラーニング」の「ハイブリッド・EV化に備える 車載電子機器のEMC対応設計」の講師であるクオルテックEMC研究室室長の前野剛氏はこう指摘する。どうすればノイズのリスクを回避できるのか。前野氏にそのポイントを聞いた。(聞き手は高市 清治)

車載電子機器における「EMC」(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)とは何ですか。

クオルテック EMC研究室 室長(元 デンソー)の前野剛氏
クオルテック EMC研究室 室長(元 デンソー)の前野剛氏

前野氏:車載電子機器が「電磁妨害波(ノイズ)を出さず、またノイズの影響を受けず、仮に影響を受けても正常に動作する」状況を意味します。

 最近の自動車はノイズを発する電子機器の集積です。しかも電動化が進められ、自動運転の導入も始まっているので、搭載される電子機器も増え、クルマの中は「ノイズだらけ」と言ってもいい状況です。ノイズは電子制御されているエンジンのトラブルなどにもつながります。トラブル回避のためにも、クルマの設計にEMC対策は必須になっています。設計者はもちろんですが、製造現場の関係者も基本的な知識は持っているべきでしょう。

車体の中は電子機器の発するノイズだらけ

なぜ電子機器からノイズが発生するのですか。

前野氏:車載電子機器には制御回路があり、制御に用いられるマイクロコンピュータには発振回路が付いています。この発振回路がノイズを発するからです。

 また、各電子機器は独自に電源を持っています。というのも、クルマのバッテリーは12V電源が主流ですが、各電子機器が必要な電圧は必ずしも12Vとは限らないので、変圧しなければなりません。バッテリーから供給される直流電圧を効率的に変圧するためにいったん電圧変換が容易な交流に変換するのですが、その際には通常、「スイッチング電源」を用います。

 スイッチング電源は、トランジスタなどの半導体素子を高速スイッチング(オン・オフを繰り返す)して、周波数の高いパルス波形を生成し、変圧した後、整流し、コイルやコンデンサーを用いたフィルター回路で平滑して電圧を変換する電源です。変換効率が80〜95%と高効率になる上に、小型・軽量化を図れるメリットがあります。

 ただし、デメリットもあります。高速でスイッチのオンとオフの切り替えを繰り返す構造上、必然的に不要な高周波のノイズが発生するのです。クルマの中に搭載されている電子機器は50〜60基程度。これらの多くが全てスイッチング電源を持っているので、クルマの中は「ノイズだらけ」なのです。

 ノイズは他の電子部品の動作に影響を与える危険性があります。最悪の場合、誤動作につながりかねません。いかにノイズの発生を防ぐか。発生したノイズの影響を最小限に抑えるか。これはスイッチング電源やその関連の技術上の課題です。