全4141文字
PR

 大企業と中小企業とを問わず、設計品質を企業として保証するには設計書の作成とQFDの実施は必須だ――。「日経クロステック ラーニング」の「トヨタの製品開発力の源泉 設計書 と品質機能展開(QFD)」の講師であるA&Mコンサルト取締役専務の中山聡史氏はこう指摘する。設計書とQFDがなぜ必要なのか。その理由を中山氏に聞いた。(聞き手は高市 清治)

開発・設計において、「設計書」と「QFD」(Quality Function Deployment:品質機能展開)の必要性を訴えています。

A&Mコンサルト取締役専務、経営コンサルタントの中山聡史氏
A&Mコンサルト取締役専務、経営コンサルタントの中山聡史氏
[画像のクリックで拡大表示]

中山氏:本来は開発・設計に必須なツールだと考えています。「QFD」というだけで「トヨタ自動車のような大企業では活用する余裕があるし、有効かもしれないが、中小企業では活用する余裕もなく、有効とは思えない」とアレルギー反応を示す人もいます。そんなことはありません。設計品質を企業として管理し、開発・設計のノウハウを組織内で継承して、設計者の負担を軽減できる。大企業、中小企業といった規模を問わず、開発・設計には欠かせないツールだと確信しています。

必要性を訴えているというと、現状ではあまり設計書やQFDは活用されていないのでしょうか。

中山氏:残念ながら、あまり活用されていないのが実情です。本来の設計フローは、製品企画の段階で製品企画書を受け取ったら、設計チームが(1)その製品に必要な機能と、(2)その機能を実現するための方式、(3)その方式でどのように設計するかを示す設計方針、の3つから成る「設計書」を作成。その設計書に基づいてQFDを実施し、設計目標値を固めてから基本設計に入るべきだと考えています。受注生産の企業では、顧客の要求仕様を受けてから先ほど説明した機能検討、方式検討を実施してから設計書を検討し、基本設計に入らなければなりません。

 ところが、製品企画書や顧客の要求仕様書などを受けてから、いきなり設計に入ってしまう企業が非常に多いのです。私は2011年にトヨタ自動車から独立して10年間、多くの企業にコンサルタントとして関わってきましたが、設計書を作成したり、QFDを実施したりしている企業はまれでした。特に受注生産の企業では顕著に感じます。

 製品企画や要求仕様書は基本的に、製品に求められる品質や性能、仕様の情報しか記述されていません。その状況からいきなり基本設計に入れるはずがないのです。

 本来はどんな製品でも、求められる仕様が固まった後、その製品に必要な「機能」とその機能を実現するための「構造・方式」、その構造・方式をどうやって設計するかが示された「設計方針」が必要です。この3つから成るのが設計書。設計書と、設計目標値を定めたQFDがそろって初めて基本設計に入れるのです。

企業内で設計をマネジメントする

 どんな製品でも、製品の品質を保証するのは設計者個人ではなく、その製品を製造して納品する企業です。だからこそ、その企業内で設計をマネジメントするために設計書やQFDが必要なのです。

 設計書やQFDは、設計をマネジメントする過程で必要なのです。この過程を省略して設計を開始するのは、設計品質を企業としてマネジメントしていないのと同意でしょう。端的に言うと「設計を設計者に丸投げしている」のと同じです。