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モーターと、その制御に必要なインバーターの性能向上は、カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)にもつながる。――「日経クロステック ラーニング」の「決定版! モーター・インバーターの基礎と制御」の講師である静岡理工科大学総合技術研究所客員教授の高橋 久氏はこう指摘する。モーターとインバーターの最新動向について、同氏に聞いた。(聞き手は高市 清治、小林 由美=ライター)

静岡理工科大学 総合技術研究所 客員教授の高橋 久氏
静岡理工科大学 総合技術研究所 客員教授の高橋 久氏

「モーター」と「インバーター」の関係を説明してください。

高橋氏:「モーター」は、電力を動力に変える電動機です。おもちゃや洗濯機、最近では電動アシスト自転車など生活の身近なところでたくさん使われているのは周知の通りでしょう。モーターと共に使用する「インバーター」は、モーターの動きを制御するのに必要な装置です。モーターの種類や使い方に合わせ、最適な電圧や周波数の電力をモーターに供給します。

 自動車用というと最近は電気自動車(EV)が思い浮かぶでしょう。しかし、EV以外の自動車でもたくさん使われています。

 例えば最近の自動車は、普通自動車で50~100個、高級車では150個以上のモーターが使用されています。電動パワーステアリング、ヘッドレストやシートの傾きの調整やエアコン用コンプレッサーなど、優れた走行性や乗り心地の良さ、安全性の向上をかなえるのに必要な部品としてモーターが使用され搭載されています。

 自動車以外でも使われています。例えば、需要が急激に高まっているサービスロボットでは、アームの関節を滑らかに動かしたり、移動速度を制御したりするのに使われるなど、1台のロボットで数多くのモーターが搭載されています。新型コロナウイルス感染症拡大への対応として、無人作業や遠隔操作の活用が注目され、ロボットの普及に拍車がかかっています。

 モーターを搭載する自動車やロボットなどの工業製品では、モーターの高性能化と高機能化が求められており、そのためにはインバーターによる細やかな制御が必要なのです。

モーターの原理や分類などを教えてください。

高橋氏: 一般に使われているモーターは電磁気を利用しており、交流電源で回転する「交流(AC)モーター」と直流電源で回転する「直流(DC)モーター」に分類できます。細やかな制御が必要なものには、永久磁石を使用した交流モーターが使用されます。その際、インバーターを用いて回転数やトルクなどを制御します。

 基本的に制御回路や駆動回路なし、直流電源に接続するだけで回転できるのが「ブラシ付DCモーター」です。コミュテーターと呼ばれるブラシとセグメントの接触で、電流を流すコイルを切り替えて回転に必要な回転磁界を発生させる方式です。これに対して、電流を流すコイルの切り替えに電子回路を用いる「ブラシレスDCモーター」があります。

 ブラシ付DCモーターは、回転を制御しやすく、安価ですが、ブラシやセグメントの摩耗、接触部からのノイズ発生などのデメリットもあります。ブラシレスDCモーターは、接触部分がないので寿命が長いメリットがあります。ブラシレス方式では制御回路が必要な分、高コストにはなりますが、機構がよりコンパクトにできます。寿命を伸ばす観点からも、産業用途にはブラシレス方式に置き換えられつつあります。

 このように、モーターの種類によって特徴があるので、用途や求める機能、メンテナンス性、コストなどに応じて使い分けます。最近の自動車では静音性や高効率、低振動が求められているので、ブラシレス方式の中でも正弦波電流で駆動する永久磁石同期モーターを滑らかに回転させ、より高効率で駆動する技術に注目が集まっています。