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 発電所の燃料や燃料電池の他にも、水素は世の中のさまざまな化学製品の原料となっています。例えば、窒素肥料の原料の大部分を占めるアンモニアは、窒素と水素を高圧化で触媒を用いて反応させて製造します。

 この他、調味料などの食品、プラスチックなどの化成品、医薬品の原料などにも幅広く用いられています。水素は燃料になるだけでなく、人間社会になくてはならない物質なのです。

 ただし、水素にはその製造方法に大きなネックがあります。製造にCO2排出を伴う点です。現時点では通常、化石燃料を消費する「化石燃料の改質」などで、結局は化石燃料を使うためCO2の排出が避けられません。

 しかし、人工光合成なら化石燃料を用いる必要はなくなります。また、人工光合成は化学品合成の炭素源としてCO2を使えます。CO2を有効活用して、グリーン水素を製造できる。一石二鳥の手法なのです。これは、植物の光合成と同じ意味を持ちます。人工光合成には、光電極や光触媒を用いるなどさまざまな仕組みがあります。私たちが研究しているのは、粉末の光触媒を用いた人工光合成です。この光触媒は、太陽光を当てれば水を水素と酸素に分解できるのです。

光触媒についてあらためて教えてください。

工藤氏::我々が研究しているのは、太陽光を受けて水から水素を取り出す「光エネルギー変換反応」を起こす物質です。酸化チタンやチタン酸ストロンチウムなどが知られています。

 一般的に「触媒」とは、「化学反応を促進する物質」を意味します。化学品を作る一般的な工業用途の触媒は、光が関与しない「暗反応」であり、化学反応を促進させるだけです。

 これに対して光触媒は暗反応に加えて、「明反応」である光エネルギー変換・貯蔵が可能です。光触媒の用途は、大きく2つに分けられます。1つは、建材の汚れ付着防止や空気浄化などです。これらは太陽光を受けて汚れや細菌などの有機物を水とCO2に分解する反応を促進させるものです。もう1つの用途が、光エネルギー変換反応を起こして水素を取り出す人工光合成です。

 人工光合成では太陽光を使って水を分解して、水素と酸素を取り出します。水素はさまざまな物質に変換できます。水素があれば、ガソリンやさまざまな種類のアルコール類を生成できます。そこで利用される現象が、「触媒反応」です。

 太陽光発電も、人工光合成と同様に太陽光を使ってエネルギーを取り出す技術です。しかし、太陽光発電システムで発電したエネルギー(電気)は電池を用いてしか蓄積できません。人工光合成は、取り出したエネルギーを水素として蓄積できるのが太陽光発電にはないメリットです。