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 2020年以降の気候変動問題に関する国際的枠組み「パリ協定」では、世界各国の二酸化炭素(CO2)排出量の削減が厳しく求められている。日本は30年度までに、13年度比で26%の削減を目標とされた。20年10月には、日本政府が「カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量の実質ゼロ)宣言」を発表。国内外でCO2など温暖化ガス排出の抑制やその手段に対する関心が急速に高まっている。その中で、注目を集めているのが、太陽光を使って水素を取り出せる「人工光合成」の研究だ。今回は、「日経クロステック ラーニング」で「人工光合成技術の最前線と光触媒技術の課題」の講師を務める東京理科大学理学部第一部応用化学科 教授の工藤昭彦氏に、人工光合成の技術やその役割、今後の可能性について尋ねた。

東京理科大学理学部第一部応用化学科 教授の工藤昭彦氏
東京理科大学理学部第一部応用化学科 教授の工藤昭彦氏

人工光合成が、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量の実質ゼロ)の観点で注目されている理由を教えてください。

工藤氏:人工光合成によって二酸化炭素(CO2)を減らしながら、クリーンエネルギーの1つである水素を、再生可能エネルギー(再エネ)を使って水から製造できるからです。このようにして得られた水素を「グリーン水素」と呼びます。

 人工光合成とは一言で言うと、太陽エネルギーを活用してCO2と水を原材料に化学品を合成する技術です。水素は人工光合成で製造できる化学品の代表と言えます。水素は燃焼時などに温暖化ガスを排出しません。そのため、太陽光発電や風力発電、バイオマスなどと同様にカーボンニュートラルの重要な切り札である再エネ利用技術の1つとして注目されているのです。

 特に期待されているのは、石油や石炭、天然ガスといった「化石燃料」の代替物としてです。化石燃料は燃焼時に、大量のCO2を大気中に排出します*1。この化石燃料を大量に消費するのが火力発電所です。現在、ほとんどの火力発電所は、化石燃料を燃焼させた熱で蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回転させて発電しています。火力発電所で水素を燃料として用いるようにできれば、化石燃料を燃焼させる必要がなくなり、地球温暖化の原因となるCO2の排出を防げます。

*1 この他、大気汚染の原因となる二酸化硫黄(SO2)、窒素酸化物(NO x )も排出する。

 この他、水素と酸素を化学反応させて発電する「燃料電池」にも期待が集まっています。水素を燃料とする燃料電池をエネルギー源とする燃料電池車(FCV)が普及すれば、電気自動車(EV)と同様に走行時にCO2を排出しないので、カーボンニュートラルにつながります。

 太陽光発電も、人工光合成と同様に太陽光を使ってエネルギーを取り出す技術です。しかし、太陽光発電システムで発電したエネルギー(電気)は主に電池でしか貯蔵できません。これに対して人工光合成であれば、取り出したエネルギーを水素として貯蔵できるメリットがあります。