熱設計を決める3つの条件
熱設計とは具体的に何をどのように設計することでしょうか。
国峯氏:発熱する部品や製品の「目標熱抵抗」を設定し、これを実現する放熱機構を創出するのが熱設計です。具体的には「使用時の温度」「使用時の最大発熱量」「使用時の許容発熱量」という3つの条件を決め、これらの条件を満たす構造を考えて図面化するのです。
例えば、ある部品が40℃の環境で使われるとします。これが「使用時の温度」。この環境下でその部品が10W発熱したときに、表面温度が90℃を超えないように設計する必要があるとします。「使用時の最大発熱量」が10W、「使用時の許容発熱量」は90℃になります。この3つの条件を満たす構造を作るのが熱設計です。
この条件からおのずと目標熱抵抗が決まります。熱抵抗とは、温度の伝えにくさです。具体的には、1W当たりの温度上昇値になります。40℃の環境で90℃まで上昇していい場合、温度上昇量は50℃。最大発熱量は10Wなので、熱抵抗は5℃/Wです。「1W発熱したとき、5℃まで温度が上昇していい」という意味です。
詳細は省略しますが、熱抵抗はその部品の表面積と、熱伝達率の乗数に反比例します。ですから熱設計でできることは2つしかありません。部品の表面積を大きくするか、熱伝達率を高める以外ないのです。
表面積を増やすには、ヒートシンクを設置する手法が知られていますが、熱を広範囲に伝えて面全体の温度を均一化するのも等価表面積を大きくする手段です。熱伝達率を高める代表的な手法はファンの設置です。ファンを回して風を起こし、空気という冷媒を使って熱を移動させるのです。
温度が上昇しすぎると熱暴走するリスクが発生します。熱くなりすぎて誤動作したり、動作しなくなったり、最悪の場合は故障します。この熱暴走を回避するのが熱設計の主な目的です。